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ネットのプリンス
第5章 アパレル業の女 再び

ホテルに8時少し前に到着すると、
以前と同じようにホテルのロビーのソファに
華奢な体を預け、 女性社長が洋介を待っていた。


「お待たせして申し上げません・・・」

彼女の対面に腰を下ろして静かに頭を下げた。

「いえ、時間通りだもの、謝る必要はないわ」

パテックの腕時計に目をやり、

妖しい笑みを浮かべた。

『ほお~・・・・パテックねえ・・・
300万円くらいかな・・・
さすがに社長さんともなると、
いいものを身につけてますねえ・・・』

財務省の官僚だった洋介は、
趣味だった腕時計の目利きについては
確かな自信があった。


「では、社長・・・・
お部屋へ参りましょうか・・・」

前回のように人目を気にして
時間差で部屋へ向かうのだと思った洋介は
彼女に先に部屋に入ってもらおうと促した。


「この部屋へ・・・・」

彼女は席を立とうともせずに、
テーブルのうえにカードキーを滑らせた。

「この部屋に行ってほしいの・・・・」

「え?」

「ごめんなさいね、
今夜あなたをお呼び立てしたのは
私の相手をしてもらうためじゃないのよ


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