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猫探偵の恋
第3章 泥酔して寝るなんて by海
ライブの後も、気持ちが落ち着かなくて、
とても真っ直ぐ家に帰りたくなかった。
いつもの店に寄って、
取り敢えず、量が多くてアルコール度数が高いモノをと思って、
ロングアイランドアイスティーをゴクゴク飲んだ。

見た目と味と、アルコール度数の高さのギャップに気づかないことが多いカクテル。
女の子をお持ち帰りしたい男子が良く勧めてきたりするけど、
私は純粋に好きで飲んでる。

「同じのを」と頼んで2杯目をゆっくり飲むと、
フワリと酔いが回ってきた。
あんまり深く物事を考えなくて済むようになったから、
そのまま店を出て適当に歩き始めた。


深夜の都会は、女が一人歩きしていても気にするヒトは居ない。
パリみたいに危険なこともない。


ふと見ると、野良猫がニャーと言うので、
辺りを見回すと、
顔がやたら大きい不細工な猫が私に向かって鳴いていた。


斜め掛けのバッグから、細長いパウチのオヤツを出して、
「ちゅ〜る、食べる?」と訊くと、
「ニャー」と答えた。


しゃがみ込んで、封を切ったちゅ〜るを少しずつ出しながらあげてみた。

がっつくこともなく、のんびり舐めるように食べる。


「上品な食べ方してる。
あなたは、王様みたいに悠然としてるのね」と小さい声で言うと、
動きを止めて私を見る。

「私も猫になりたかったな。
でも、私なんかが猫になったら、
すぐに猫拐いに連れていかれるか、
車に轢かれちゃうかな?」と言うと、
そっと頭を擦り付けてくれる。


「優しいのね?
撫でさせてくれるの?」と訊いてから、
耳の辺りと首を優しく撫でてみると、
涙が出てきてしまった。


「ありがとね?
あなたみたいな猫さんと一緒に居たら、
猫になっても安全に暮らせそうね?」と言いながら撫でていたら、
気持ち良くて急速に眠たくなってしまった。



まずい。
これは、もう動けないヤツだ。

まあ、凍死するような季節でもないし、
この王様みたいな猫さんと居れば大丈夫かな?と思って、
眠気に身体を委ねてしまった。
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