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猫探偵の恋
第4章 ボス猫からの話 by洋平
深夜のランニングをしながら、
彼女のことを考えていた。

特に手に触れた時の、
あのフラッシュバックしたような映像と不思議な感覚のこと。


いつもの習慣で、ボス猫から情報を貰う路地裏へと曲がって、
息が止まりそうになった。


人が倒れてる…?

犯罪現場かよ?


恐る恐る近づくと、
あの子が横たわって笑いながら寝ていた。
その隣にボス猫が少し困った顔で箱猫になっている。



「ど、どうしたんだ?」


「洋平か。
この子、飲み過ぎたみたいで、寝ちゃったんだよ。
変なヤツが来るといけないから、
見張ってたんだ。
ちょうど良かった。
保護してやってくれ」と、ボス猫が言う。


「しかし、この子、良い子だな。
ちゃんと、俺に触る時も、
触っても良いかとか、きちんと訊いて確認するんだよ。
しかも、ちゅ〜るくれたよ?
洋平なんか、いつもカリカリだもんな」


あ、俺の特別な能力は、
猫と話が出来ることだって、言ったっけ?

信じて貰えないから、誰にも言ったことはない。


ボス猫には信頼されていて、
迷い猫情報は彼から貰っている。

ちゃんと本人の話を聞いて、
意思を尊重してるからって言われてるんだ。


飼い主が酷いって言う場合は、
心優しい、猫とお別れした人の家へと繋ぐ。

本当に野良猫になりたいヤツは、
ボス猫に引き合わせて、
話をつける。

ちょっとだけ外の世界をっていうヤツも、
満足出来るまでそうさせてから、
飼い主の処へ連れ帰るようにしてた。


ボス猫や、野良猫達には、
新鮮な水やカリカリを持って行ったり、
本人が望むなら、
里親の会に連れて行って避妊や去勢手術もするように手配もしている。

そりゃ、子供は可愛いし、
交尾は気持ち良いけど、
野良猫として仔猫たちが都会で育つのはハードだから、
それを望まない親も居る。

とにかく、本人次第っていうのを優先にしてる。



でも、この日の問題は、
まりんって言っていた女の子だ。

「なんかさ、猫になりたいって言って泣いてたよ。
洋平、連れて帰ってやりなよ」とボス猫に言われて、
取り敢えずおんぶして、とぼとぼ歩き始めた。

途中で目が覚めたけど、
寝ぼけてるのか、酔っ払っているせいなのか、
俺の家に行くって言うから、
連れて帰ることにした。

知らないぞ。
俺は、健全な若い男子だから、
絶対、襲うと思うよ?
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