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猫探偵の恋
第1章 ライブハウスで会いましょう by海
「良かった!これ…」


立ち止まって肩で息をしながら呼吸を整えていたら、
その肩を叩かれて、ビクッとしてしまって、
CDを落としてしまった。


慌てて拾おうとすると、
拾い上げて、
「はいっ」と言いながら、
CDと私のお財布を渡してくれるので、
見上げると、ボーカルのコが立っていた。


思ったより背が高い。
っていうより、私の背が小さいのか。


「あっ…ケース、割れちゃいましたね。
交換しましょうか?」


「自分で落としちゃっただけだから。
中身は、大丈夫でしょ?」


「お財布、テーブルに置いて行っちゃったから、
焦って追い掛けてきました。
両手で握手する時、
わざわざお財布置いて、
両手の握手を返してくれたんですね?」


うわっ。
恥ずかしい。
お財布、忘れたことにも気づかなかった。


「俺らのバンドの前に出てたバンドのファンの方ですよね?
メッチャ、踊ってた」


うわっ。
見られてたのか。
もう、ヤダ。
そんなとこ、見ないで欲しい。


「それなのに、俺のバンドのCD、
買ってくれて、
ありがとうございます」


いや、良い声、してたしね。
歌詞も良かったから。


「俺ばかり、話しちゃって、
スミマセン。
お急ぎだったんですよね?
良かったら、また、聴きに来てください。
それと、CDの感想も聞かせてください」

そう言うと、また、握手しようと手を差し伸べる。


手が触れ合うと、
また、いくつかの映像がフラッシュバックする。


「あ…れ…?」
彼が戸惑った声を上げる。


「さっきも不思議な感じがしたんですよね?」


うん。
私も同じ。
こんなの、初めて。


「あ、名前だけ教えてください。
俺は、洋平です」


「まりん」


「えっ?」


「まりんです」


「可愛い名前ですね?
宜しくお願いします」
と言いながらも、手を離そうとしない。





「おーい、洋平!!
撤収しないと!!」と言う声が後ろからする。


「おー」
と言いながら、

「なんか、手を離したくないな。
また、来てくれる?」


私はかろうじて、頭を縦に振ると、
そっと手を離した。



「またね?」と声を絞り出して、手を振った。


彼はそのまま、お辞儀をして、ライブハウスに消えて行った。
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