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猫探偵の恋
第2章 秘密のアルバイト by洋平
その日もいつものライブのつもりだった。

出番はトリの1つ前。
早くトリで出れるようになりたい。
卒業までには!と思ってる。


俺たちの前は、
そこそこ名前も知られているパンク寄りのバンドで、
やたら激しくてキレが良い演奏がウリだ。
歌詞とかは単純だけど、
ベースのグルーブ感とリズムキープ力が圧巻だ。
しかも…全身にタトゥーを入れていて、
そっちも凄い迫力で、
あんまり話をしたことはない。

みんなから、兄さんと呼ばれていて、
物凄くスタイルも顔も良い彼女を連れて来ている。


そこのバンドのファンは、
男女比も半々で、動員力は凄い。

油断すると、トリ前のポジションも危ういかもしれないなと思いながら、客席を見てたら、
小柄なくせに、
キレッキレな踊りをしている女の子が目に飛び込んで来た。

背が小さいから、油断すると他の客に飲み込まれて見えなくなるけど、
あまりにも楽しそうに、
そして激しく踊っているので、
目が離せない。

あんなファンのコが居るなんて、
羨ましいよな…

そう思いながら、
自分達の出番になって、
セッティングして、センターに立った。


さっきの女の子が踊っていた辺りを探したけど、
勿論居ない。

そうだよな。
俺たちのファンではないから。


そう思って視線を上の方に向けると、
一番奥のバーカウンターのスツールにちょこんと座っている後ろ姿を見つけた。


あの子だ!


そう思ったら、
なんだか、いつも以上の力が湧き上がってくる気がした。


彼女の為に歌おう。

そう思って演奏し始めたら、
スツールから身体を捩るようにこちらを向いてくれるのが見えた。


俺は彼女のことだけを見て、
彼女のことだけを考えて、
ただ、歌った。
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