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陽炎日記
第3章 カスミ
 終いには「来い!来い!来い!来い!」とまるで呪文の様に胸中で繰り返していた。もし誰かが見ていたら鬼気迫る様子に逃げ出していただろう。いかんな。気持ちを落ち着けないと気配が漏れてしまうじゃないか。改めて深呼吸して気配を消し直す。
 12時57分。
 来た!
 紺のブレザーに灰色の膝丈スカート。白い靴下に黒の革靴。手には学生鞄を持った松浦高校のパンフレットに載せたくなるような模範的な制服姿。
 カスミだ。
 噴水の前に来ると立ち止まり不安そうに右に左に視線を泳がせている。そう、「走らせて」ではなく「泳がせて」だ。そこには犯人つまり俺をとっちめてやろうなどという反抗的な意思は感じられない。見知らぬ脅迫者に怯える憐れな被害者の画だ。これが芝居ならたいした女優だ。
 さあ、行くか。
 立ち上がりカスミの背後に立つ。数日入浴出来てなかったあの日と違い今日は花の香りのシャンプーの良い薫りがセミロングの髪から漂ってくる。俺と会うために態々入浴してきてくれたんだと身勝手な事を考える。こういった一方的な思考の行着く先はストーカーだ。気を付けよう。
 鼻腔一杯にシャンプーの香りを吸い込んで囁く。
 「よく来たね。」
 突然声を掛けられてギョッとした様子でカスミが振り返るが残念。真正面に居る俺の姿は見えていない。忙しなく辺りを見渡す度に髪が揺れ良い香りを振り撒く。
 「キョロキョロするな!」
 鋭く言い放ちスカートの上から引き締まった尻を撫で上げる。
 「キャ~!」
 悲鳴を上げる口を背後から手で覆い塞ぐ。
 「騒ぐなよ。死にたいの?」
 脅し文句が効いたのか口を覆う掌の温かさに怯えたのかカスミは膝をガクガク震わせながらも何とか声を噛み殺す。
 良い娘だ。聞き分けの良い娘にはご褒美をあげよう。空いている左手を二人の身体の間に差し込み改めて尻を撫でる。
 息を飲みながらも今度は抵抗せずに触られるに任せている。
 恐怖の為に小刻みに震える唇が掌を擽る。その感触に愚息がムクムクと頭をもたげる。固くなってきた肉棒を右の尻臀に押し当て左の尻臀を力を入れて揉む。
 それは愛撫ではなかった。単なる弄び。自分が男に玩具にされているのだと教え込む為のプロセスだ。
 押さえてる手の下から嗚咽が漏れ親指と人差し指が流れて来た涙で濡れる。
 ポキン!心が折れた音が聞こえた気がする。
 
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