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見えない男の淫乱物語
第1章 透明人間

「ふう~…死ぬかと思った」

理論上、あのようなガスは
発生するはずはなかったのだがなあ。


そんな事を考えていると
実験室のドアが開いて
アシスタントの堀越聖子が

「先生!大きな音がしましたけど
大丈夫ですか?」と入室してきた。


「大丈夫だ、何ともない」

そう告げた幸太郎の声のする方に
聖子は目をやって
「キャ~~っ!」と悲鳴を上げて
倒れてしまった。

「おい!どうした!!」

幸太郎は聖子のもとに駆け寄って
抱き起そうとした。

そして聖子が悲鳴を上げて
卒倒した理由を知った。

抱き起そうと差し伸べた右手がないのだ!

いや、白衣の腕の輪郭はある。

しかし、その先のあるべきはずの手首がない!


「どうしちまったんだ!?」

右手を確かめようと左手を添えようとしたが
どういうわけか左手さえ見当たらない。

『なんだこれは!
俺はどうしちまったんだ!!!』


幸太郎は研究室の片隅に
立てかけられている姿見で
自分の姿を確認した。


「!!!???」


おもわず我が目を疑った。

そこには見慣れた己の姿はなく、
ただ白衣とズボンだけが
フワフワと漂っていた。

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