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夜の蝶の物語
第6章 エピローグ
「あれっ?こんなところに
お弁当屋さんが出来たんだ…」
坂口勇樹は歩みを止めて、しばし躊躇した。
コンビニ弁当も飽きたし、
たまにはホカ弁でもいいか…
坂口は踵を返すと店内に入っていった。
「いらっしゃいませ」
可愛い女性の声が店内に響く。
『へえ~、こういう店は
大概がおばちゃんなのに
ちゃんと女の子を雇っているんだ…』
坂口は女性の顔を見ずに、
ひたすらメニューと格闘していた。
格闘の末、出した答えが『のり弁』だった。
「すいません、のり弁を一つ」
注文を入れながら初めて女性の顔を見て
坂口は「あっ!」と声をあげた。
キョトンとしている女性店員に向かって
「スミレさんですよね?」と声をかけた。
スミレこと、大空恵美(めぐみ)は
懐かしい名を呼んでもらって
ドキッとした。
「あの…どちら様でしょうか?」
恐る恐る尋ねてみた。
「坂口です。一度だけ
貴女のお世話になった者です
あの時は寝入ってしまって、
貴女をお見送り出来なくてすいませんでした」
坂口は丁寧に頭を下げて当時の非礼を詫びた。