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第11章 雅彦と芳枝

雅彦と芳枝は、お見合い結婚だった。

見合い写真を一目見て
雅彦は芳枝に一目惚れした。

鼻筋が高く、堀の深い顔立ちは
一見ハーフのように思えた。

当時、人気を博した
歌手の山本リンダにも似ていた。

『こんないい女が見合いだなんて…』

雅彦は怪訝に思った。
きっと他にも言い寄る男がいるに違いない。
自分なんて箸にも棒にもかからないだろう、
そう思いながら見合いの席についた。

芳枝はと言うと
雅彦との見合いに消極的だった。

自分が派手な顔立ちだったせいか
男の好みも悪っぽいヤクザ風の男が好きだった。

実際に地元を離れて
都会でモデルの仕事をしているときに
町で評判の悪い不良と付き合っていた。

だが、その男は借金まみれで
借金の返済に芳枝に体を売れと言ってきた。
悪い冗談だと思っていたが
「ここで働いてくれ」と
ソープランドに連れて行かれて、
男の本性に嫌気が差した。

そして芳枝は男から逃げるようにして
地元に帰ってきた。

モデルの仕事をしていたと地元でバレると
きっとヤリまんに違いないと
村の人たちは
芳枝を色眼鏡で見るようになり
美貌にも関わらず芳枝に言い寄る男は皆無だった。

不憫に思った両親は芳枝に見合いを薦めた。
それが雅彦だった。

気乗りはしなかったが
いざ会ってみると芳枝は雅彦の人柄に惚れた。
誠実な男だったので、彼なら自分を幸せにしてくれると雅彦の求愛に応えた。