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女流作家~君を愛すればこそ~
第13章 新たな愛の形
夫の着替えを持って桐子が所轄の警察署に行くと、
応接室で警官のジャージを借りて
虚ろな表情で夫の晃が
ソファにポツリと座っていた。
「あなた…無事だった?」
桐子が呼び掛けても
心ここにあらずといったように
晃は放心状態だった。
「とりあえず着替えてください」
下着を手渡しても
自分で着衣をしようともしないので
幼児に服を着せるように
桐子がパンツを履かせシャツを着せた。
ズボンとポロシャツを身につけると
ようやく落ち着いたのか
晃は桐子に抱きついた。
「もう大丈夫よ
彼女は逮捕されたから」
そう言いながら、
桐子は夫を抱きしめた。
頃合いをみて警察官が応接室にやって来た。
「いやあ~、今回はとんだ災難でしたね」
さて、城島節子について
被害届を出されますか?と
警察官は一枚の書類をテーブルの上に滑らせた。
「その事なんですが…」
虚ろな表情だった晃が
唇をキッと噛み締めながら
ポツリと話し始めた。
「被害届…出すのをやめようと思うんです」
「はあ?手錠までされて監禁されたというのに?」
警察官は納得いかないという顔で晃を見つめた。
「あなた…それでいいの?」
妻の桐子までも被害届は出すべきではないかと
夫を促した。