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キャンバスの華
第5章 華の嫉妬
てっきり画家の師範のもとに
嫁いでくれると思っていた両親は
「この恥知らず!」と華を罵った。
罵倒されて華は、
もう帰るべき家などないのだと悟った。
行き場を失った華を拾ってくれたのが
今の居住してる家屋の男だった。
妻に先立たれて
一人娘も結核で早くにこの世を去った。
乞食同然で
橋のたもとで寝起きしていた華を見つけ、
家に連れ帰った。
男は華を娘のように可愛がった。
華も男を父親のように慕っていたが、
そんな幸せな日々も長く続かなかった。
心臓に持病を抱えていた男は、
ある日、発作で唐突に旅立ってしまった。
男は口にさえ出さなかったが華を溺愛し、
華が知らぬうちに
養子縁組がなされていたので
男が亡き後の家屋は華のものになった。
傷心が癒える頃に飛び込んできたのが次郎だった。