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キャンバスの華
第7章 華の変化
二人して湯屋からの帰りの足取りは
異様に重かった。
あの時、次郎が駆けつけてくれなかったら
私はあの旦那を受け入れていたのだろうか・・・
そんな思いが華の頭の中を駆け巡っていた。
次郎と女将さんが素っ裸で
母屋で乳繰り合っていたのではないかという
そんな思いさえどうでもよかった
いや、次郎とて男なのだ
それも男女の交わりを覚えて、
やりたい盛りの若い男なのだから
ほかの女を味見することはいささか構わなかった。
ほかの女と遊んでも
帰るべき寝座が自分であればいいのだ。
据え膳喰らわぬ男など、
これまた味気ない男というものだ
だが自分は、自分だけは
他の男に言い寄られても
次郎への貞操を貫き通す女でありたい。
今朝、二人して手をつなぎ
仕事に向かう時にそう思っていたのに・・・
旦那に体を触られて感じてしまっていたのは
紛れもない事実なのだ
へのこが陰戸に触れる瞬間まで、
我が身は男を受け入れようとしていた・・・
華の深刻そうな横顔に
次郎は心が痛んだ・・・
「華・・・」
そっと声をかけて手を伸ばして
華の手を掴もうとした
だが指先が触れるか触れまいかという瞬間に
まるで拒むかのように華の手は
スっと逃げてお髪(ぐし)をかきあげた。