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夢の異邦人(エトランゼ)
第10章 有里は生け贄
「ただいま」
疲れているのだろうか?
夫の義孝の声がやけに暗い。
それに比べて
夫が招いた部下の佐々木という男は
やけにご機嫌で
有里が用意した料理を次から次へと平らげた。
「いやあ、奥さんの手料理はホントに旨いです」
「本当ですか?
お口に合って良かったですわ」
佐々木に誉められて
有里はご機嫌になっていた。
それに比べて夫の義孝は口をヘの字にして
料理に手も着けずに
ひたすらアルコールを胃袋に流し込んだ。
「あなた、食事もせずにお酒ばかり召し上がると
悪い酔い方をしてしまいますわよ」
有里が注意をしても
「俺は呑みたいから飲むんだ
ほっておいてくれ」と
とりつくしまもなく、さらに不機嫌になった。
案の定、二時間ほどで義孝は酔いつぶれた。
「招いておいて
先に酔いつぶれるなんて失礼ですよね」
仕方なく有里は佐々木の隣に座って酌をしてあげた。
『これじゃあまるでホステスだわ…』
娘の有紀も
佐々木の声のデカさに参ってしまい
これではゆっくり寝れないからと
友人の家に泊まりに行ってしまった。
料理を食べ尽くし、
さすがに佐々木も酔いが回ってきたのか
「奥さん、申し訳ない
今夜は泊めて貰えますかね」と
ネクタイを外しながら言った。
「じゃあ、このリビングに
お布団を用意させて貰いますね」
しかし、今夜の飲み会はいったい何だったのかしら?
夫はほとんど佐々木と会話していなかったし…
変だわねと思いながらも有里は客用布団を敷いた。
せっせと布団を敷く有里の尻を
佐々木は舐めるようにじっと見つめていた。