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夢の異邦人(エトランゼ)
第10章 有里は生け贄
「あなた…これは一体どう言うことですか?
ちゃんと説明してください」
「説明もなにも
佐々木くんが君を抱きたいと懇願するので
抱かせて上げた、ただそれだけだ」
「抱きたいとお願いされたら
あなたは妻を抱かせるのですか?
私は一体なに?
あなたが会社で部下と機嫌良く仕事をするための道具ですか?」
「うるさい!男には男の事情ってもんがあるんだよ!」
さすがに義孝の態度に有里はブチ切れた。
「すまなかったの一言も言えないあなたとは
もう一緒に暮らせません!
私、この家を出ます!」
有里は佐々木に掛けられた精液を
ティッシュで拭うと
たっぷりと染み込んだティッシュを義孝に投げつけた。
「おい待てよ、何も出ていく事はないじゃないか」
今の生活を捨てるという怖さはあったが
義孝から愛情を感じられない今、
この家に未練などなかった。
ある程度の着替えなどをバッグに詰めると
「長い間、お世話になりました」と
捨て台詞を残して、有里は家を飛び出した。
義孝が追いかけてきて引き留めるかと
わずかばかり期待したが
義孝は再びソファに座り込んで
気の抜けた泡のないビールを喉に流し込んでいた。
さて、飛び出したものの
行く宛といえば…
『大牟田さん…』
有里の脳裏には大牟田しか思い浮かばなかった。
有里はスマホを取り出すと大牟田に連絡を入れた。