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夢の異邦人(エトランゼ)
第11章 同棲生活
長いコールだけがむなしく鳴り続く。
時刻は日付が変わり
真夜中と言ってもよい時間だった。
誰しも睡眠中の時刻…
『お願い…起きて…』
有里は祈る気持ちでスマホを強く握りしめた。
ダメか…
諦めかけた瞬間、
『はい』と大牟田の声がスマホから聞こえた。
「大牟田さん!」
名前を呼んだ瞬間、
張り詰めていた気持ちが弛み
そこから先は何も話せなくなり
有里はスマホを握りしめて大泣きした。
『有里?どうした?
何があった?泣いてちゃわからないよ』
訳がわからずに大牟田は、
どうしたんだと問うことしかできない。
数分間も泣き続けて、
ようやく有里は落ち着きを取り戻して
「今から、あなたの部屋に行きたいの」と
本題を持ちかけた。
「僕の部屋に?
そりゃあ、かまわないけど…
もしかしてご主人と何かあったのか?」
パラレルワールドに放り出されたのだ。
自分の知っている人達が
皆、少しずつ今までとは違っていた。
頭を打って病院に担ぎ込まれ、
手を握って介抱していた旦那さんとは
同一人物だが別人という事は十二分に考えられた。
「とにかく迎えに行くよ
こんな深夜に女性が一人歩きするものじゃない
近くにコンビニはあるかい?」
有里は少し先に見慣れた青、赤、緑の看板が有ることを大牟田に告げた。
「じゃあ、そのコンビニの中にいろ
すぐに迎えに行くから」
早く来てね…
有里は大牟田の迎えを待つためにコンビニに飛び込んだ。