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夢の異邦人(エトランゼ)
第12章 旅の終わり
夫の義孝、娘の有紀、
家族がそれぞれのパートナーを見つけて
新たな時間が流れ始めていた。
有里もまた大牟田と同棲を始めるために
彼のマンションの一室にいた。
「荷物はとりあえずここに置いておくね」
ありったけの下着や衣服に日用品を
詰め込んできた有里のトランクを
大牟田は車から降ろして
部屋の片隅に置いた。
「ごめんなさい…部屋が狭くなってしまうわね」
「いいさ、明日には不動産屋に行こう
別の部屋を探さないとな」
「そんな…引っ越しなんていいわ
私ならこの部屋で大丈夫よ」
「実はここ、単身者専用のマンションなんだよ
同居人がいると出ていかないといけないんだ」
「まあ!そうとも知らずに
私ったら軽々しくあなたと暮らしたいなんて言ってしまって…」
「いいんだよ、
いい歳をした男が
いつまでも独身でいる方がおかしいんだ」
大牟田はそう言うと少し休むといいと
ソファに置いてある洗濯物を無造作に寄せて
有里の座る場所を確保した。
「少し休んだら洗濯物を片付けてあげるわね」
本当は甲斐がいしく世話女房気取りで
てきぱきと家事をこなして
いい女をアピールすべきなのだろうけど
今朝方の修羅場が心に鉛をおとしたかのように
気分がおちこんでいたので
大牟田の言葉に甘えてソファに寝転んだ。
「あ、いや、寝転ばれると俺が座る場所が…」
大牟田の少し休めばいいと言うのが
ソファに座ればいいという事だったのかと
有里は慌てて居ずまいを正した。
「悪いな何から何まで狭い所で…」
有里の隣に腰を降ろした。
「あ!じゃあ、こうすればいいよ」
大牟田は有里の体をグッと引き寄せて膝枕をしてくれた。
「これなら俺も座れるし有里も横になれるし
一石二鳥だ」
男の人に膝枕をしてもらうなんて初めての経験なので、ドキドキして眠気など吹っ飛んでしまった。