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夢の異邦人(エトランゼ)
第1章 夢の異邦人(エトランゼ)
「あなた、私、パートに行ってもいいかしら?」
食後のティータイム。
浅香有里は主人の義孝に
働いてみたいと相談した。
「パート?なにも有里が働かなくても、
生活費は充分に渡しているつもりだけど?」
そう言って義孝は熱い紅茶を口に含んだ。
「ううん。金銭的な問題じゃないの」
「じゃあ、なぜ働きたいの?」
「ほら、娘の有紀もこの春から高校生だし、
時間の余裕も持てる訳でしょ?
今までずっと家庭に閉じこもってきたし、
そろそろ社会復帰して見聞を広げたいのよ」
たとえ義孝が反対しても、
有理はパートに行くつもりだった。
実は内緒で、
すでに市街のブックセンターの
面接試験を受け、
来週から働いてほしいという内定を
いただいていた。
「うーん、ま、いいか。
でも家事を疎かにするのだけは勘弁してくれよ」
義孝は仕方ないなあという顔をして、
クッキーを口に頬張り、
ポリポリと音を立てながら咀嚼した。
「やった~~☆ありがと、あなた」
有里は義孝の頬に顔を寄せ、
チュッと音を立てキスする真似をした。