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夢の異邦人(エトランゼ)
第3章 夫の義孝
既婚者なのに…
人妻なのに…
私ったら出会ったばかりの大牟田という男に
体を許してしまった…
後悔の念はなかった。
だって、おざなりの夫婦生活で
熟れている女体がセックスを求めていたんですもの
初日の仕事を終えて帰路につく
有里の足取りは軽かった。
見慣れた街の風景さえ違って見えた。
精神的なものかしら?
『わたし、生まれ変わったような気分だわ』
駅前の商店街で夕飯の買い物をしている時に
娘の有紀を見かけた。
娘は見知らぬ男子高校生と腕を組んで
楽しそうに歩いている。
『まあ!あの子ったら付き合っている彼氏がいたのね
私には付き合っている男性はいないって言っていたのに…』
まあ、あの年頃はいろいろと親に内緒にしておきたい事があるものよね。
わたしは見なかった事にして
娘に声をかけるのをやめた。
その夜の夕飯は楽しかった。
いつもはテレビを見ながら
黙々と食事をする夫の義孝がやけに饒舌で
次から次へと話題を振りまいて
有紀と娘の有紀を笑わせてくれた。
この場に娘の有紀がいなければ
まるで新婚当時に戻ったかのようだった。
「あなた、今夜はご機嫌ね」
「そうかい?いつもと一緒だよ」
なあ有紀、いつものパパだよな?
義孝に尋ねられて
「うん、いつもこんな感じじゃん」と
口裏を合わせたかのように娘の有紀までもが
これが日常だと言い始めた。