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夢の異邦人(エトランゼ)
第7章 白昼夢の終わりと始まり
「頭を打ったって?
記憶喪失にでもなったのかい?」
「だからそう言ってるじゃない!
私、あなたが誰かもわからないのよ!」
元の世界に戻ったんじゃないの?
それとも元の世界に、この翔という男がいて
私は本当に記憶を失っているの?
有里は何がなんだかわからなくなって
マジで頭がぐちゃぐちゃになりそうだった。
「わかった、僕のことを思い出してもらうために
ちゃんと話すよ」
翔は有里の体から離れて
ソファに座るとこれまでの事を話し始めた。
「僕と有里が出会ったのは
去年の夏の飲み会だったよ
僕たちは大学の同期メンバーさ」
その時点で有里はいやな予感がした。
『私、大学には進学していないわ…』
「その席で有里は悪酔いしてしまい
タクシーで家まで送るつもりが
僕も酔っていたから悪ノリしちゃって…
そのままホテルへ…
あとはお決まりの不倫関係さ」
「私、拒まなかったの?」
翔の話を聞きながら
有里はドキドキし始めていた。
この世界も私が暮らしていた世界ではないということね…
どうすれば、あの世界に帰れるの?
いや、出来ればもう一度、優しい夫と暮らし
職場で乱行していた世界に戻りたいと思い始めていた。
「君は拒むどころか、
超が付くほど積極的だったさ…
そしてズルズルと不倫関係は
今日まで続いていると言うわけさ」
翔の脳裏に当時の事が鮮明に浮かんできた。