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おうち時間
第4章 玄関で
その日は爽やかな風が吹く朝だった。
万希子は早々に洗濯を済ませ、ベランダで干し始めた。
周りにあまり高い建物のない、マンションの5階からは広々とした青空が楽しめる。

『んっあ……や、あ…っ、だ、だめ…』

微かに甘い響きのする声が聞こえた。
あ、あ、と途切れ途切れに聞こえるそれは、朝の爽やかな空気には似つかわしくない、淫らな喘ぎ声だった。
朝から何なの、と万希子は顔を顰めた。

万希子の夫はちょうど1ヶ月ほど関西の方へ出張で家を留守にしていた。
歳の差もあり、子どもに恵まれなかった2人だったが、その分、夫婦としては濃密な時間を過ごしてきた。
結婚して10年経った今でも、3日と空けずに行為に及ぶほどには仲が良かった。
万希子は夫を心から愛し、求めていた。
だからこそ、ひと月も不在である今、万希子の身体の渇きは最高潮に達していた。

『あ、も、もう……』

甘く、艶のかかった喘ぎ声が微かに聞こえる。
そういえば、と万希子は思い出した。
半月ほど前、隣に若いカップルが引っ越してきたのだ。
小柄な可愛らしい印象の女性と今ドキ、な感じの男の子。
引っ越しの挨拶の後も、何度かすれ違ったり、見かけたりしたが、いつも2人は仲睦まじい様子だった。
丁度、夫が出張に出かけてすぐの頃だったから、2人の様子は羨ましくもあったのだった。
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