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シャイニーストッキング
第2章 黒いストッキングの女1
 51 存在感
 
 急に私から今までのそんな出世欲がまるで憑きものが取れたかのように消え去り、心に余裕とゆとりが生まれた…

 そして物事に対してある程度達観できる気持ちも生まれ、現在のようなややゆとりのある面持ちの性格になったような気がするのだ。

 たまたま離婚がプラスに働いただけなんだよなぁ、本当にたまたまに…

 そんな余裕とゆとりにより今の仕事に巡り合い、佐々木ゆかりというかけがえのない愛する女の存在に出会えたのだと思う。
 そしてこの二日間の出来事で私にとって彼女がいかに大きな存在であり、本当に愛しているのだということをつくづく実感したのである。

 今度こそは大切な存在を、大切な愛する彼女を無くしたくはない…

 私はソファに座り、寝酒のワイルドターキーのロックを飲みながらそんな想いを巡らせていた。
 そしてこの二日間の彼女の美しい顔を、
 仕事中の付け入る隙の無いキリッと引き締まっている顔を
 欲情に興奮した淫靡な顔を
 ベッドの上の妖艶で淫らな顔を
 そして今日のショッピング中に見せた可愛らしい顔を…
 そんな彼女の魅せる色々な表情の移り変わりを思い浮かべていた。

 すると、ふと一瞬だが哀しいような切ないような、物憂げな表情をする刹那的な瞬間が何度かあったことが浮かんだ。
 
 そうなのだ、昨夜わかったアレなのだ…

 それは私が例の黒い彼女を見るとき
 目で追うとき
 そして黒い彼女の艶めかしいあの光沢の黒いストッキングを穿いた脚を舐め回すように見てしまうとき
 そのことにゆかりが一瞬でも気づいたときの表情なのであった。

 確かにアレだ、そのときにふっとそんな目を、表情を浮かべるんだ…

 自分の無神経さにつくづく嫌気が差しできていた、大切な愛しい彼女を哀しい顔にしてはダメだ。

 もっと気を遣え、彼女を不快にさせてはダメだ、元妻のように哀しませちゃダメだ…

 そう考えるとあの黒い彼女の存在感の大きさを余計に感じてしまう。
 だが私は黒い彼女とは話したことさえない、ただ、フェチな昂ぶりの本能的なモノにより、無意識に目が向いてしまうだけなのである。
 そしてこの先彼女をどうのこうのするつもりもないし、そんな事はあり得ない。

 ゆかりを愛しているし、離したくはない…

 それには彼女の存在感を何とかせねば、あの黒い女の存在感を…

 

 
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