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シャイニーストッキング
第3章 黒いストッキングの女2 美冴
 2 視線

 気になることがあるにはあった…
 
 それは感じる視線である。
 
 バブル景気が落ち着きつつあっても街中は色とりどりの派手な色に溢れている、そんな中ほぼ常に黒い色を身に纏っているから逆に目立ち、違った意味での注目の視線を感じる事は多々あった。
 だが、現在感じている視線の類はそれらの視線とは違うのである。

 一つの視線はこの会社の統括部長からの視線である、そしてもう一つは、ここのコールセンター部の女課長からの視線であった。

 ここの統括部長とは全く接点はなく、話したことも、一介のオペレーター業務の派遣社員の身では話す用事さえもないのだが、朝の通勤時に部長室の前を通る時と、業務中にたまに部長を見かける時に一瞬だが感じる視線に違和感を感じていた。
 だが、この部長の視線には私自身の心の奥に騒つきを感じるので、なんとなく視線の意味はわかってはいる。

 だが、もう一つの女課長の視線の意味がイマイチわからないでいた。
 かといって睨みつけるとかの怒り系の類の視線には決して感じられなく、本当に何の意味があるのかがうかがい知れないのだ。
 その不思議な視線は一日に数回、多い時は十回以上も感じる事があった。
 だが、私は仕事のミスやクレームは等はなく、万が一それ等のトラブルが起きたとしても、直接の上司であるチーフかその上の主任が対応するので、やはり統括部長と同様にほぼ接点がないのだ、だから余計に女課長の視線には違和感と戸惑いを感じていたのである。

 ちなみに佐々木ゆかり課長のことを我々オペレータースタッフ達は
 
    鉄の女…
      と、陰では呼んでいる。
 しかし、決して悪い意味ではなく、仕事が出来て、キリッとしていて、容姿端麗なところからのイギリスの元首相のマーガレットサッチャー女史から取った揶揄する意味からのあだ名であった。

 なぜかそんな鉄の女からの黒い女の私に対する視線に、不思議なモノを感じていたのである。

 なんなんだろうか…

 接点があるわけではないし、話し掛ける理由もない、ましてや立場でもないのだ。

 ただ、そんな不思議な視線を感じることだけであり、私に直接何か害があるわけでもない、だからどうにもできないから気にしないようにはしているのだが、どうしても意識をしてしまっていた。

 何か話す接点はないものか…

 


 
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