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シャイニーストッキング
第3章 黒いストッキングの女2 美冴
 13 仕事の話し

 「まだ内密なんだが…」
 
 次の朝ブランチを食べていると、そう部長が話しを切り出してきた。

 それは…
 本社がバブル崩壊で破綻しかかっている有名な某総合保険会社を近々吸収合併するのだそうだ、そして合併後に子会社化をした後、扱っている保険商品の全ての総合案内のインフォメーションや、契約までの橋渡し業務をこのコールセンター部署が全てを担うカタチになることが、ほぼ本決まりらしいのだ。

 「うわぁ、すごいじゃないですか」
 「うん…まあ、そうだな…」
 「えぇ、なんか乗り気じゃなさそうですね、でも、部長がアレなんでしょう」

 アレとは、出世の意味である。

 「うむ、まあ、本部長らしい…かな」
 「うわあっ、すごいっ」
 大出世である。
 なのにそれほどノリ気が見えない。

 「なんかさぁ、そこまであまり出世欲がさぁ…」
 部長曰く、出世欲は当然あるのだが、まだ自分の中では早過ぎるのだ…と。
 直属の先輩上司のイケイケな専務が、順番待ち的な三人飛ばしで話しを持ってきたのだ…そうだ。

 「だからさぁ、プレッシャーがね…、それにあの有名な某保険会社の執行役員にもなっちゃうわけよ…」
 かなりの大出世である。

 「執行役員…、す、すごいですねぇ」
 バリバリのキャリアアップを目指しているわたしとしては、この話しは羨ましくもあり、望むところなのだが、確かにプレッシャーはかなり大きいといえる。

 「だけどゆかりくん…」
 部長の口調が急に仕事モードに変わった、彼は仕事中はわたしを佐々木くん、とか、ゆかりくん、のように、くん、を付けて呼ぶのだ。

 「きみだって、部長代理待遇と総合職の管理課長になる予定だぞ」
 「えぇっ、部長代理…」
 わたしは驚いてしまう。
 
 「当たり前じゃないか、私がそう推薦するし、他に適当な人材はいないし、それに本社から総合職で何人か異動してくる予定だから…」
 「総合職…」
 「そう、主に保険系の総合職かな、だからきみにも頑張ってもらわねば…」
 寝耳に水であった、思いもしなかった事である。

 「ただ、本当は営業系がよかったんだよな」
 「いえ…」
 わたしは首を振る、今は一歩一歩キャリアアップの階段を昇れればよいのだ、部署など関係はない、そしてわたしは嬉しかった、なぜなら

 彼と共に歩めるということを…

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