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シャイニーストッキング
第3章 黒いストッキングの女2 美冴
 14 リストアップ

 この秘密裏に進んでいる某有名保険会社の吸収合併による子会社化は早くて夏のお盆の前後の時期くらいに正式発表となり、辞令が降り、新事業も来春スタートを目指して即開始なのだそうだ。
 ただこのオペレーター部署ではそれに先駆けて、色々と準備を始めてよいと上からの指示が降りているらしい。
 この時期は某証券破綻や、某銀行破綻等の経済的な事件も起きており、正式発表したら注目を浴びると予想される。
 
 「早速なんだけど、新事業の人員の把握が必要なのと、それに伴い現スタッフの優秀な者を数人ピックアップして、こっちに異動する旨のオリエンテーション等を一足早くやりたいんだ……を任せるから」
 「は、はぁ…」
 「ただでさえ、今でも忙しいのに悪いな」
 「いいえ、頑張ります」
 「きみ以外の人には任せたくないからさ」
 そうなのだ、ここのスタッフ管理システムは全てわたしが新たに作り直して運営しており、そして問題なく働いている、だから他人には任せたくはなかった。
 
 そして多忙で充実した日々が始まっていく。

「ああ、笠原主任」
 わたしは三部門あるスタッフを管理している主任の中でも一番信頼している彼女を呼ぶ。

 「……というわけで、とりあえず四、五人のリストアップを二週間位の内にお願いします、人選は笠原主任に任せますから…」
 新事業の新しい責任者候補のリストアップをお願いしたのだ。
 責任者といっても外部から新規採用もするが、現スタッフの中にも優秀な人材は数名いる、殆どが人材派遣からなのだが、中には社員採用希望者もいるのでその辺をピックアップしてもよいと考えていたのだ。
 そしてこんな忙しい毎日を送りながらも部長とは仕事の延長にならないようにお互いに気を使い、上手く逢瀬の時間も作って過ごしていった。

 「佐々木課長、リストです」
 「あ、ありがとう…」
 十日後の午後に例のリストを笠原主任が持ってきた。

 季節は梅雨明け宣言が出て夏休み近くになるにつれ、損保系では事故処理系が増え、通販系もお中元等の売れ行きが上がり、それに連動して流通系も多忙になるというちょっとした繁忙期を迎え始めていたのだ。
 そしてわたしはデスクに座り、渡されたリストを読む。

 「あっ」

 そのリストの中に
      蒼井美冴
         の名前があった…



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