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シャイニーストッキング
第3章 黒いストッキングの女2 美冴
 18 履歴書

 わたしは午後からの面談の為に、朝から色々と仕事を片付け、一段落してから今日の面談予定者達の履歴書を読んでいく。

 今日も部長は朝から本社出向で不在であった。昨夜も専務と同席らしく、一度携帯電話に電話をしたのだが、慌ただしく切られてしまった。
 特にここ数日は忙しいらしく、今度の週末は逢えるのかもわからない状況だそうだ。
 少し寂しいが仕事だし、もう30歳過ぎなのだから若い娘みたくは我が儘はいえなかった。
 ただ、今日だけはなんとなく彼の声が聞きたかったのだ、なぜならあの黒い彼女と面談するから。
 彼女の存在感を意識してから初めて一対一で話しをする、元々仕事の話ししかしないつもりではいるのだが、なぜが彼女の目を見ると不安を感じてしまうのだ。
 
 わたしは既に意識だけでも彼女の存在感に圧倒されつつあった、そして彼女の履歴書を見て更に気持ちが落ちてしまった。

 黒い女、彼女の履歴はある意味、経歴としては完璧といえるからだ。

 東京出身、37歳、バツイチ独身、子供無し、実家暮らし
 都内の私立小、中、高校を経て、偏差値の高い某有名女子大経済学部卒業
 英語検定準1級
 高校、中学教員免許
 旅行業務取扱管理者
 経営管理士
 秘書検定1級

 某大手旅行代理店勤務歴6年
              等々

 なんなの…

 わたしはこの履歴書を読んで驚いてしまっていた。
 わたしは英文科卒業の海外留学組で、いや、殆ど遊学組といった方が正しいくらいで、逆にいえば遊びのお陰でたまたま語学力が身に付いただけといえ、こんなビジネス資格等々は持ってはいない。
 
 わたしは気持ちの上で圧倒されてしまっていた。

 なんで派遣オペレーターなんてしてるのかしら…

 『彼女は優秀なんですよ、黒いだけですから…』
 笠原主任の言葉が脳裏に浮かんでくる。
 
 学歴、資格、職歴…そして女としても魅力的である、これじゃ、黒い女、じゃなくて、
 黒いだけのとってもいい女じゃないか…

 再びわたしの中で、彼女の存在感が大きくなっていく。
 
 ああ、部長に、彼に、浩一さんに逢いたい、このことを話したい、気持ちを後押ししてほしい…

 しかしこの後彼女と、いや他の四人共々と面談をしなくてはならないのだ。
 
 黒い彼女、いや、蒼井さんは最後にしよう…

 

 
 
 
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