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シャイニーストッキング
第3章 黒いストッキングの女2 美冴
 21 熱い夜 ①

 『どうしても逢いたいの…』 

 ゆかりから携帯電話の留守番録音に、そうメッセージが入っていた。

 ここ連日の専務のお供の銀座通いにも、少々食傷気味となっていた。
 確かにサラリーマンの憧れの夜の銀座は、来店している客層の豪華さ、そしてホステスの美しさ等々、その高価な値段に見合う人脈と、人脈形成には正に宝箱のようではあるのだが、私にとってはそんな憧れの銀座はまだ早すぎなのだ。
 そしてそれは、毎日豪華な食事ばかりでは胃もたれしてしまうのと似たようなものといえるのである。
 今夜は重要な案件も既に終わっており、専務の惰性での銀座通いのお供なだけなので、抜けるのにも問題はなかった。

 ゆかりが携帯にまで電話してくるなんて…

 初めてに近い、珍しいことであったのだ。

 何かあったのか…

 そして私のマンションまで来るという、それもまた珍しいことであった。

 確か、今夜で三度目か…

 別に独身だし離婚後に購入したマンションであるから、結婚時代の名残り等は全くないし、週三回家政婦を頼んでいるから彼女の来宅には何の問題もなかった。
 だが、普段の逢瀬は共に食事をし、その流れの最後にお気に入りのいつものホテルのバーで飲むというパターンなので、必然的に殆どこのホテルの部屋で過ごすこととなっていたのだ。

 逆にいえば、私も彼女のマンションには一度しか行ったことはなかったな…

 『ピンポーン…』

 まるで私の帰宅をどこかで見ていたのではないか、という絶妙なタイミングでチャイムが鳴る。

 「やあ、いらっしゃい、どうした…」

 玄関に立つ彼女は綺麗であった。

 ゆったりとした白地に細いストライプの後ろボタン掛けのワンピースに、赤いロングのカーディガンを羽織り、いつものくつろぎ時のスッピンに眉毛と口紅だけというスタイルなのだが綺麗なのだ。
 銀座のホステス達のお金を掛け、着飾った美しさとはまた違う綺麗さといえる。

 そして私はそんな彼女を、いや、目を見て、急激な胸の昂ぶりを覚えた。

 「早く…抱いて…」

 目が欲情の輝きを放っていたのだ。

 あの夜と同じだ、まるでデジャビュだ…
 
 
 そうあのイタリアンレストランの時の目、そしてあのバーで私の手を導いた夜のあの目と同じように、興奮と欲情に妖しく濡れた目と同じであった…





 
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