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第13章 絡まるストッキング7　　　　　　本部長大原浩一

　1　1997年８月８日金曜日午後１時

　吸収合併の記者会見は、本社の一番大きな会議室で行われる。
　今日の記者会見は、昨今のバブル崩壊の様々な弊害の時期の中での久しぶりに明るい経済的な話題という事もあり、かなり沢山の記者達、報道関係者等々が集まっていた。

　そしてすぐに記者会見は始まった。

　正面壇上の真ん中には山崎専務、その右隣に本社では本部長であり、今度吸収合併された保険会社では執行役員となる私、大原浩一が座る、そして山崎専務の左隣には今回吸収合併された保険会社の社長と専務の計が四人が座り、記者会見が始まる。

「それでは定刻となりましたので、記者会見を始めます」
　司会者がそうマイクを通して告げる。

　バシャッ、バシャッ、バシャッ…

　会場内では沢山のフラッシュが煌めき、沢山のカメラのシャッター音が鳴り響く。

　私は内心、初めて参加する記者会見に興奮を覚えていた…

　沢山の記者が、カメラが、テレビカメラが、この壇上の私を含む四人に注目し、眩い沢山のフラッシュが煌めく。
　実際、今日の私の立場はあくまでも山崎専務の補佐役であり、余程のアクシデントが無い限りは発言はしない。
　つまりは座っているだけなのだが、なんにしても初めての体験なのである、ドキドキと胸が高鳴り、内心興奮していたのであった。

　そして原稿があるとはいえ、山崎専務は実に立派に堂々として、そしてハキハキとした素晴らしい記者会見発表という大任を見事に果たしたのである。

　この大役を見事にこなした山崎専務は、今後、また新たに本社内での立場をより強固にする事となるであろう…

　最後の簡単な質疑応答が終わり記者会見が無事に終了したのは、予定時刻を15分程過ぎた頃であった。
　私達は記者達の解散を待って会場に戻った。
　
「おう健太、来たのか…」
　そして山崎専務は甥っ子である武石健太の姿を認め、そう声を掛けた。
　既に山崎専務は彼が甥っ子であるという事のネタバラしをしていたので、堂々と声を掛けたのだ。

　あ、ゆかりも一緒に居る…
　私は彼の傍らに居る佐々木ゆかり部長の姿を認め、少し心がときめいたのだ。

　その彼女の姿は、相変わらずの凜とした雰囲気を漂わせた美しさであり、なんとなく彼女の周りが輝いて見えたのである。

　どうしたんだ、２日振りにゆかりの姿を見たからなのか…