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シャイニーストッキング
第3章 黒いストッキングの女2 美冴
 32 饒舌

 「何か…、聞いてもいいのかな…」

 ゆかりをこの腕の中に抱き、私はそう問いかけてみると首をもたげ私を見つめてきた。
 だが、その目からはさっきまでのような欲情の光りはすでに消えており、今度は違った意味の光りが私には見えたのだ。

 「あ、あのね、今日ね…」

 「うん…」
 
 おっ、なにか感じが変わったな、声にいつもの張りが出てきたし話してくれるのか…
 そう思った途端であった。

 「あのね、今日ね、あの例の黒い彼女がリストアップされてきたから履歴書を読んだの、それがね、その経歴や持っている資格がすごいのよ、それで面談をしてね、それがね………………目がなんていうかまさにおぼろげ、そんな感じの不思議な瞳なの、だから本当に…………なの」

 黒い彼女の面談をしたこと、そしてその面談で翻弄されてしまった想いと、そんな彼女の受け応えにジレンマに陥ってしまったこと等々を、さっきまでのゆかりとは別人にのように饒舌に、まるで、そう、一気に堰を切ったかのように話してきたのだ。

 「う、うん、そ、そうだったのか…」
 これ程饒舌に話す彼女を初めて見て少し戸惑いを感じた。
 
 この前も思ったのだが、最近カドが取れたような感じがする、もしかしたらこれがゆかりの本当の姿なのかもな…
 そう内心感じ始めてきた。
 そして新ためてその彼女の話しの内容にも驚きと戸惑いを感じたのだ。

 「ふぅん、そうなんだ、おぼろげな瞳ねぇ…」
 
 おぼろげな瞳かぁ、どんな感じなんだろうか…
 
 その『おぼろげな瞳』というゆかりの表現には非常に興味を惹かれた、いつも彼女を見る時はあの魅惑の黒いストッキング脚しか見ていなかったから想像もつかなかった、だから一度その瞳だけでも見てみたいと思ったし、経歴にもすごく興味を感じたのだ。

「じゃあ、私もあの黒い彼女と面談してみようかな…」

 ほんの軽い気持ちでそう言ったのだが…

 「ダメっ、絶対にダメっ、会わさない」
 強い口調だ。

 「うっ…、いや、ただ…」

 「ダメ、全部わたしに任せてるんでしょう、部長には絶対会わせない」

 「絶対って…、わかったから、そんな怒るなよ」

 ゆかりは急に動揺した、そして正に図星だったのだろうと思えたのだ、そしてさっきの会話の内容にも、本当の本音は私に隠しているのだろうと推測できた…




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