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シャイニーストッキング
第3章 黒いストッキングの女2 美冴
 35 蒼井美冴 ①

 「じゃあ、失礼しました…」
 
 私は鉄の女こと、佐々木課長との面談を終えて会議室を出た。

 「あ、蒼井さん、お疲れさま…」
 会議室から私の担当部署のオペレータールームに戻ってくると、笠原主任がそう声を掛けてくる、その目は

 面談どうだったの…
   
 という問い掛けの目をしていた。

 「え…と、とりあえずお断りしました」

 「えっ、断ったのっ」
 驚いた声だ。
 後々に、カドが立つと嫌だったので笠原主任には、とりあえず…、と付けておいた。

 「へぇ…、断ったんだ…」
 あんないい話しをもったいない、という顔をしている。

 「はい…、意外でしたか」
 「うん、蒼井さんは受けると思っていたから…」
 
 そうなんだ、笠原主任はそう思っていたのか…

 この笠原主任というベテラン社員さんは、直属の上司であり、私自身も一番信頼をしていた。
 三つのオペレーター部門のスタッフはほぼ、四つの派遣会社から構成されており、各派遣会社からは一人ずつチーフがいて、それらをこの笠原主任ともう一人の副主任でまとめている、という構図で成り立っている。
 ただ、チーフも派遣社員なので、実質最低限の権限しかなく、様々な仕事上の事柄等々について殆どのオペレーター達はチーフを飛ばし、この主任と副主任に直接対応を依頼するというカタチをとっていたのだ。
 だからこの笠原主任は私達にとって主任という立場だけではなく、会社代表ともいえる存在であった。
 そんなこの笠原主任はなぜか私には好意を持っているらしく、こうしてよく話し掛けてくれるのだ。
 そして私にとっても彼女はこの会社内で唯一話す存在でもあった。

 「いいの…」
 「はい、いいんです…」
 「そうなんだぁ…」
 釈然としないような顔をしていたのだが、とりあえず彼女との会話は終わり、私は自分の席に着く、時計を見ると既に就業時間は過ぎていた。

 そして帰り支度をしながら、先程の佐々木課長との面談のやり取りを思い浮かべていく。




 「せっかくですけど、お断りします…」

 「えっ、別に今すぐに返事はしなくても…、もう少しゆっくり考えてからでも…」

 「せっかくですが、私にはそういった類いの事には全く興味なくて…」

 そうなのだ、私にはそんな仕事の話し等は全く興味も意欲もなかったのだ…
 



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