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シャイニーストッキング
第3章 黒いストッキングの女2 美冴
 38 蒼井美冴 ④

 「ただいま…」

 「美冴、おかえりぃ」
 帰宅すると、近くに嫁いでいる姉が来宅していた。
 姉、美鈴は3歳年上の40歳既婚、二人の子持ちである。

 「相変わらず黒い服なんだね…」
 さっそく姉が嫌味を言ってくる。

 「大きなお世話です」
 私は離婚後、紆余曲折を経て二年前から実家に出戻り居候しているのだが、どうやら姉はそのことと最近の私の様子が気に入らないらしく、顔を見る毎にチクリチクリとこうした嫌味を言ってくるのだ。
 
 この姉、美鈴は私と違い、子供の頃から社交的で、明るく、快活で、現在も中学教師をしており、旦那さんも中学教師である。
 実は私の家族は教師一家であり、10年前に他界した父親と母親と共に中学教師であった。
 だが、私だけが違う道に進んだのである。
 両親、姉共々からはそんな私の進路に対しては何の反対もなかったのだが、私自身はなんとなく居心地が悪く、就職も都内で楽に実家から通勤できたのだが、早々に家を出て一人暮らしをしたのだ。
 そして私の中でも、教職資格を取りながら、その道に進まなかったことの後ろめたさを持っていたのも事実であった。
 その後離婚をし、現在は、紆余曲折、色々あったのちにこうして実家に出戻り居候しているのだ。
 
 母親は既に定年退職をしており、退職後、今も健康に元気に地元の地区民生委員や児童センター等でボランティア活動をしている、そして姉はそんな母親を心配だからという名目でちょくちょく実家に顔を出してくるのだが、どうやら本当はここ最近の私の事を心配をしてくれてのことらしいのだ。 
 そんな姉の気持ちは嬉しいのだが、ただ、最近の私にとってはそんな姉の変わらない明るく、快活なところが少々苦手ではあった。

「叔母さん、ちぃっス」

「あれっ、やっちゃん、あ、康徳くん」

「そうっス」
 甥っ子の康徳も来ていた。
 
「えぇっ、しばらくね、すっかり大きくなっちゃってぇ、高校生かな」
「そうっス、高2っス」
「そうよぉ、もう高2なのよ、あっという間でしょう」
 姉が微笑みながらそう言ってくる。

「そうかぁ、もう高2なんだぁ…」
「今度の夏休みに、ほら、近くのファミレスでバイトすることになったから、ついでに下見にさ…」

 えっ、高2…

 ファミレス…

 バイト…

 





 
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