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シャイニーストッキング
第3章 黒いストッキングの女2 美冴
 39 蒼井美冴 ⑤

 「そうかぁもう高2なんだぁ…」

 「今度の夏休みに、ほら、近くのファミレスでバイトすることになったから…」

 えっ、高2、ファミレス、バイト…

 そのワードに突然、私の頭の中がフラッシュバックした。

   あっ…、か、和哉っ…

 五年前、離婚直前に禁断の関係に陥ってしまった和哉のことが突然脳裏にフラッシュバックして甦ってきたのだ。

    和哉、かずや…

 急に胸がザワザワと騒めき始めてくる。

    和哉、かずや…

 「なんかさぁ、こいつ、大学行かないで調理師になりたいって言うんだよ」

 「え、あ、うん…」

 「だから調理の専門学校に行かせようかなってさぁ…」

 「う、うん…」
 もう姉の言葉は頭には入ってこなかった、突然のフラッシュバックに思考は和哉のことに支配されつつあったのだ。

 「…ねぇ、聞いてるぅ…」

 「あ…、ごめん、なんか、体調悪くって……」
 私はそう言って慌てて自室に入る。

   ああ、和哉……

 突然のフラッシュバックに心がザワザワと騒めき、脳がパニックを起こしそうになってきていた。
 あの時から約五年、その和哉とは離婚をきっかけに離れ、その後わたし自身に色々あり敢えて完全に脳裏の隅に封印していた存在である。

 本来ならば和哉との事は忘れられない経験なのだが、離婚からその後にかけての私自身にとっての激動ともいえる出来事にそれを自ら心の隅に追いやり、そして完全に忘れ去っていたことなのだ。
 まさかそれがこの甥っ子からのワードの連想で、まるで雪崩のような急激なフラッシュバックとして記憶が甦ってしまうとは、夢にも思っていなかったのである。

 余りの心の衝撃に目眩がしてとても立っていることができないでいた。
 私はベッドに横になり、そのまま気を失うかのように眠ってしまったのだ。

   ……あ、あぁぁ……


 「……あっ…」
 そして目覚めた時には既に3時間が過ぎていた。

 やばい、もうこんな時間だわ、いつの間にか眠っていた…

 起きても胸の騒めきは収まってはいなかった、いや、ますます昂ぶってくるようであった。
 
 ベッドから起きて水を飲む。

 どうしよう、ザワザワが止まらない…

 意識が覚醒すると今度は当時の彼の顔が浮かんでくる。

 とても今からは眠れそうにない…

 

 
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