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シャイニーストッキング
第3章 黒いストッキングの女2 美冴
 43 蒼井美冴 ⑨

 彼女は私を美冴なので「ミー先輩」と呼び、
 私は彼女を貴恵の貴から「キーちゃん」と呼んでいた。
 中学時代からの足掛け5年の後輩である「キーちゃん」を、私はすごく可愛いがっていたのだ。


 陸上部在籍の高3の夏休みまて私はボーイッシュなベリーショートの髪型をしていた。
 そしてこのボーイッシュさが、よくある女子校の特有さで思春期の女子達には、先輩から後輩までの学内での同性にモテていたのだ。
 だから当時のバレンタイン、クリスマス、私の誕生日等々は、モテまくり、告白されまくりであった。
 そしていつも一緒のキーちゃんもまた同じ想いだったようで、私が高3の夏休み前の最後の合宿の時についにキスをしてしまい、それがきっかけでしばしの期間、魅惑の時間を過ごすことになる。

 今も、当時も私には同性愛という自覚は勿論なく、女子校特有の憧憬的な雰囲気の流れと、常に一緒にいるという事でキーちゃんに対しては全く警戒心もなく、ただ私を慕ってくれている可愛いい後輩という緩みと、高校最後の合宿という一種のノスタルジーな想いのせいで、彼女に誘われるままにキスをしてしまったのだと思う。

 そしてそのきっかけのキスから、夏休みという心の緩みと開放感、それと思春期特有の性への好奇心から、各々の部屋でキスからの愛撫と抱擁を数回程度経験した。
 だが、互いの秘めていた罪悪感と、私自身が夏休みの終わりにカナダへの短期留学のホームステイで離れたのと、部活動の引退、そして大学受験の勉強と徐々に彼女との距離が生まれ、離れていき、その流れのままに高校の卒業という事実により、思春期の幼く、甘く、魅惑な体験は終わりを告げたのだ。
 そして私は大学に進学し、彼女は確か親の仕事の関係によりドバイに家族と共に移住してしまい、そこからは完全に音信不通となってしまったのだ。
 
 そんなキーちゃんこと藤咲貴恵の当時、ほぼ毎日のように私に向けていた目の光りと、佐々木課長から感じたあの不思議な目の光りが同じようにダブって私には感じられたのだ。

 あ、あの頃のキーちゃんと同じ目だと…
 そうか、あの頃のキーちゃんと同じということは、それは、まさか、アレなのか…

 私はぐるぐると脳裏にそんな様々な想いを浮かべ、不惑の想いの昂ぶりを感じてきていた。

 ああ、また胸がザワザワしてきた…
 
 

 
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