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シャイニーストッキング
第13章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一
 228 再会の後悔

「じゃ、オレも明日オヤジの10回忌でさ、明日の朝早いから…」

「う、うん…」
 すると、やや、寂しそうな声を漏らす。

 だが、時間的にも、今夜の二人にも、この辺りの別れがちょうど良いのである…
 それはさすがにきよっぺも分かっている様であった。

 そして玄関で軽く別れのキスをしてドアに手を掛ける、と、スッと反対側の手を後ろから掴んできたのである。

「ん…」
 後ろを振り向くと、大きな瞳が
『明日は…、明日も逢えるの?…』
 と、無言で訊いてきた。

 そんな彼女の気持ち、想いは、痛い程分かったし、伝わってくるのだが、如何せん明日は10回忌の法事で多くの親戚が、それこそ色々と煩い親戚もやってくるのである…
 だから、はっきりと明日について、答え様がなかったのだ。
 そして、彼女もそれは本当は分かっているはずであった。

 だからこその、この、無言の問い掛けなのである…

「………」
 そして私も、そんな想いを目に込めて見つめ返す。

「うん…また……ね」
 するとそう呟き、掴んでいた手を、指先を、離した。

「うん、また…」
 そして私もそう応え、玄関ドアを閉める。

 バタン…

 そのスチール製の重々しい玄関ドアの閉まった音が、夜の静かなマンションの廊下に響いていく。
 そしてなんとなくそのきよっぺの瞳から感じてきた虚しさや、寂しさが心に静かに染みてきたのである。

 それにやはり最後は、別れ際には、彼女特有の『愁い、憂い』という想いの瞳に戻っていたのだ。

 だが、それは仕方がない…

 仕方がないのだ…

 この先の現実的な事を考えれば、聡明で理知的な彼女には分かる事なのだから…

 やっぱり私達は、会わなければ…

 逢わなければ…

 再会しなければ…

 よかったのかもしれない…

 後悔の想いが少し湧いてきていた…

 タクシーで実家に帰る僅かな道すがら、そんな切ない想いを感じながら考えていたのだ。

 だが、今更どうしようもない…

 もうどうしようもないのだ…

 もうこうして再会して…

 そして、愛を再燃させてしまったのだがら…

 再会を後悔しても、今更仕方がない事なんだ…

 これには開き直るしかなかったのである。




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