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シャイニーストッキング
第3章 黒いストッキングの女2 美冴
  49 完全降伏

 ここ数年の異常気象という言葉を裏打ちするかのように、今日、観測史上初めての最高気温という言葉がテレビモニターに字幕として流れているのだが、わたしが目で蒼井美冴を追うと、この真夏真っ盛りの今日もまた変わらず黒いストッキングを穿いている。

 ふと彼女を探して目を向けると、その視線に気付いたのか、彼女もまたこちらを見てくる。

 ドキッ…

 久しぶりの彼女の目にドキッとしてしまう。

 あの面談の不惑な想いから最近は特に、敢えて彼女を見ないように心がけていた。
 わたしの中における彼女の存在感については既に認識したことを認めたし、そしてあの不思議なアンニュイな雰囲気からの不惑な魅力に惹かれたことも認めることにしたのだ。
 いわゆる完全降伏である。 

 彼女の内面からの美しさ、理知的さ、独特の雰囲気、そしてあの素晴らしいといえる経歴と資格、どれも無視できない存在なのだと、どれも皆、素直に認め、自身で呑み込めばよいのだ、と、開き直ることにしたのだ。
 ただ、彼女から受けてしまった不惑の想い等には理解も、納得も、消化もできてはいないけれども、この多忙さに任せればある程度流すことが出来ていた。
 そしてこの多忙さが幸いし、わたしの今の最愛の男である大原部長が殆ど毎日本社に出向し不在が続き、その彼のフェチ心からの視線にも意識したりの嫉妬をしなくて済んでいた。
 だからなんとか心は落ち着いていたのだ。

 しかし、再び、先程の笠原主任によりその想いは再燃してしまったのだ。

 ザワザワがとまらない…

 そんな心の動揺を少しでも抑えられればと思い、彼の携帯電話に電話をしてみるのだが会議中なのか電源が切れていた。
 
 ダメだ、ちゃんとしなくちゃ…

 それに彼女はこの前、こう言っていた

 その類には、全く興味が無いんです…

 だからどうせ今度も、あっさりと断ってくるに違いない。

 せっかくの笠原主任の手前もある、一応面談して簡単に終わらせてしまおう…

 わたしはそう思い、なんとかこの心の騒めきと不安を拭おうとしていた。
 そして再び無意識にふと、彼女を見る

  あっ…

 なんと彼女はオペレーターとしての電話応対をしながらわたしを見ていたのだ。

 まるでわたしの心の揺らぎがわかっているみたいだ
 ザワザワがドキドキに変わっていく…




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