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シャイニーストッキング
第4章 黒いストッキングの女3 ゆうじ
 3 バリ島

 当時は急速に円高が起きていて、円高還元差益というワードが急上昇で、高級輸入品が安くなったり、海外旅行がブームとなっていた。
 そんな中、近所にあるカフェバー兼サーフショップのオーナーの新井のりゆき、ノリくんが来店してきたのだ。
 ちなみにこの旅行代理店の入居しているテナントビルのオーナーはノリくんの父親であり、なんと私の借りているマンションのオーナーもそうであったのを、後々に知った。

 「ちわース」

 「いらっしゃいませ」

 「あれっ、新しい人だ」

 「……」

 「ああ、今度入ってくれた蒼井美冴さんだよ、よろしく頼むね」
 と、この旅行代理店の社長が言った。

 「あ、蒼井さん、あそこのカフェバーとサーフショップのオーナーの新井さんだ」

 「あ、蒼井です、よろしくお願いします」

 「あ、ちぃース」

 軽い男…

 カフェバーとサーフショップのオーナー、若くて、お坊ちゃま風で、色黒でチャラいナンパサーファー、それが彼に対する第一印象だった。
 私は初めて会った人を一瞬で観察し、その人となり等を推察してしまう癖があったのだ。

 「蒼井さん、美人っスねぇ」

 「おおっと、ノリくん、手出さないでよね、前にいたあの子も…」
 どうやら私の前に勤めていた女性と何かあったらしい。

 「社長、大丈夫っスよお」
 本当に軽い、その時サーファーという人種はそうなんだ、と思っていた。

 「ご用件は、旅行ですか…」
 私は淡々と進めていく。

 「あ、そう、バリ島へ…」

 彼曰く、年明けに2週間程のバリ島へのサーフトリップをしたいので色々手配してほしいとのことであった。
 当時のバリ島はまだ一般的な観光地化しておらず、ほぼサーファーしか行かない島であったのだ。
 しかも最近の円高もあり、バリ島でのレートの差が50分の1、つまり、円は50倍近くになっていた、まさにサーファー天国といえ、またツアーという大手のプランは少なく、あっても比較的高いので、こうして旅行代理店が飛行機チケット、現地ホテルの手配等をすることが、バリ島トリップに関しては通例であったのだ。

 「じゃ、とりあえず明日までに何パターンかよろしくっス」
 そう言って慌ただしく彼は出ていった。

 実はバリ島には後輩がオーストラリア人と結婚して移住しておりコネがあったのだ。


 


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