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シャイニーストッキング
第4章 黒いストッキングの女3 ゆうじ
 19 ゆうじ ⑮

 エレベーターにカツカツとヒールの音を立てて女性が小走りに入ってきた、そしてそのまま彼女は8階のボタンを押したのだ。

 あ、同じ階だ…

 そしてドアが閉まった途端に微かにムスク系の甘いフレグランスの香りが漂ってくる。

 あ、これはあのお香の香りだ…

 ゆうじの好きなお香と同じ香り。
 
 ん、同じ香り…

 私は何気なくその女性を見た。
 
 肩までのウェーブの効いたソバージュヘアー、高級そうなブラックミンクのファーコート、黒ベースに細いゴールドストライプのミニのタイトスカート、そして黒いストッキングにゴールドのハイヒール。

 うわぁ、やばい、綺麗な脚…

 そしてさり気なく横顔を見る。


 えっ、まさか…

 そこにはよく雑誌やテレビに出ている有名モデルの

   MIKACO 
   
   が、いたのだ。

 急にドキドキと胸騒ぎがした、それは同じエレベーターに有名モデルと一緒にいるからではない。

 えっ、まさか、もしかして…

 エレベーターが8階に到着し足早に彼女が出ていく。

 まさか、まさか…

 私はゆっくりとエレベーターを出て、少し離れて彼女の後ろを歩いた。

 あっ…

 やはりそうだった、なんとあの有名なMIKACOがゆうじの部屋の前に立ち止まったのだ。
 そしてピンポンを押す。

 2度、3度、ピンポンを押す。
 当然ゆうじは帰ってないから出るはずがない、すると彼女は苛立った様子でやや強めにスチール製の玄関ドアを叩く。

 「チッ…」

 なんとあの有名モデルの、あの美しいMIKACOが舌打ちをしたのだ。

 私はエレベーターホールの柱の陰でその様子を覗いていた。
 そして目の前で起こっているこの現実にドキドキと胸が高鳴っていたのだ。

 すると彼女は苛立った様子でシャネルのバッグからおもむろに携帯電話を取り出してダイヤルをプッシュする、その感じは何度も掛けたかのようなリダイヤルボタンのように見えた。

 「あっ、ゆうじっ、ようやく出たっ」

 その声はテレビで聞いたことのあるモデルのMIKACO、本人である。
 そして彼女は確かに、ゆうじっ、と苛立った様子で言ったのだ。

 えっ、まさか、そうなの…

 私にとって驚きの現実である。

 「なんとか日本に帰ってきたのよ」

 彼女は怒っていた…



 
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