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シャイニーストッキング
第4章 黒いストッキングの女3 ゆうじ
 21 ゆうじ ⑰

 「昨夜は…」

 次の昼休みにゆうじから電話がきた。
 
 「え、うん…」

 「そうか、見たのか…」

 「うん……」

 「ちゃんと全部話すから…」

 「うん、わかった…」
 今夜、彼の話しを聞こう。

 なんとなくだがこの電話で不安は消えた。
 開き直りなのかもしれないが、彼を信じると決めたはずなのだ、という思いが彼の声を聞いた私の不安を消したのだと思う。

 大丈夫だ…

 19時に仕事が終わり約束通りにゆうじのマンションに直行する。 
 ふと、気づくと今夜はクリスマスイブであった。

 「こんばんは…」

 部屋に入るとゆうじが立って私を迎えてくれ、そして私を見るその目は、海のような紺碧の光をしていた。

 ああ…

 私はその目を見た瞬間に込み上げてしまい、涙が溢れ出してきたのだ。

 「あぁ……ううぅ…ぅぅ…」

 それは慟哭といえる心の叫びだったのかもしれない。
 心に張り巡らせていたダムが壊れたかのように涙が止まらない。

 「ああ…ぅぅ…ひく…」

 よく思い返せば、あの離婚の時も、それからも、私は泣いていなかった。
 心のダムに涙を貯めていたのかもしれない、それがこのゆうじの心の中の大きな紺碧の海の光に飲み込まれしまったのだと思われたのだ。

 「お、おい、美冴…」
 彼は泣きじゃくる私を抱きしめてきた。

 本当は話しなど聞かなくてもよいのだ、私は信じているのだから

 だから

 だから 

 こうして抱きしめてくれるだけでよいのだ

 私を大きな紺碧の海で飲み込んでくれればよいのだ…

 「あぁ……ひ、ひっく…」

 声に出して泣きじゃくる。

 
 「コーヒー煎れたから…」

 コーヒー豆の心地よい香りが、泣きじゃくる私の気持ちを落ち着かせてくれたようだ。 

 「…………ごめんなさい」

 「い、いや、こっちだよ…」

 そして彼はゆっくりと昨夜の話しをし始めた。

 やはり昨夜の彼女は有名モデルのMIKACOであった。
 彼女とは1年近くの関係だったそうだ。

 ゆうじはサーフィンのアマチュア規定に引っかかりプロでもアマチュアでもない中途半端な状態の29歳の時に、全てがイヤになり気持ちを切り替える為にもと、オーストラリアからニュージーランドへの約1年間のサーフトリップをしたそうだ。
 
 
 
 


 
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