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シャイニーストッキング
第4章 黒いストッキングの女3 ゆうじ
 23 ゆうじ ⑲ 
 
 ああ、ゆうじ…

 彼の唇から流れ込んでくる熱い想いに、私の心もカラダも融けていくようであった。

 だが私にはちょっと前から気づいていたことがあったのだ。

 枕の上にウェーブのかかった髪の毛が落ちていて、ベッドの下に黒いストッキングが丸まっていることを…

 私はこれに気付き怒りではなく、焦燥でもなく、動揺でもない、彼女、MIKACOさんの哀しみと悔しさからのささやかな抵抗を感じ取った。

 そもそもこのベッドには昨夜の寝た形跡がなかったのだ、一昨日の夜に共に過ごし、朝に私がベッドメイクをしたままなのである。
 シーツを直し最後に上に布団を掛ける際に、私はその布団の端を少し捲っておくという癖があった、その癖はそこから布団を直ぐに捲れるようにという殆ど実用的ではないといえる私独特の癖なのだ。
 そしてその掛け布団の端はそのままであった、まさかそんな布団の捲り方を他の人がやるはずがないし、今までに私以外の人がやっているのを見たことがない。

 だとしたら、あのウェーブのかかった髪の毛は私への彼女自身の存在感の表れなのではないのか。
 おそらく私のストレートの髪の毛に気付いたのだろう、そこでわざと枕の上に置いたのに違いない。

 私だってたまたまあの布団の癖がなかったらどんなに動揺したかわからない…

 そしてベッドの下に隠れるように置いてあった丸まった黒いストッキング。
 これも、彼女自身だって彼にこのストッキングを使って愛されているのよ、という私への無言のアピールなのだと思う。

 彼にどんな風に言われたのはわからないが、おそらく正直に私の事を話したに違いない。
 32歳の普通のOLで…

 27歳のトップモデルでタレントが32歳の普通のおばさんOLに彼氏を取られた事になったのだ、彼女のプライドはズタズタに違いなかった、私だったらそうだから。

 ただプライドはズタズタでも、その高いプライドが泣き叫ぶのを許さなかったのだと思う、だからせめて、こうしたささやかな抵抗を仕掛けたのじゃないのだろうか。

 私は彼に抱かれながらそう考えていた。

 このモテまくりの遊び人の女になるのだ、腹を据えて、こうした彼女達の悔しい想いにも負けないようにしっかりと彼を受け入れなくちゃならないのだ…

 脳裏にはあのMIKACOさんの姿が映っていた。



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