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第15章 絡まるストッキング９　　　　　美冴とゆかり

18　憧れの…

「うわぁ大きな冷蔵庫、しかもビルトインだしぃ…
　うわぁオーブンレンジも大きいっ」
　わたしはアイランドキッチンに続いて、ゆかりさん宅のキッチンを興奮しながら、そしてその周りの収納スペースや、食洗機やオーブンレンジ等をくまなくチェックをして、またそんな感嘆と興奮と感動の声を、いや、叫び声を上げていた。

「それにみんな新品みたいにピカピカでぇ、ゆかりさんすごく綺麗に使ってるんですねぇ…
　はぁいいなぁ、まるでショールームみたい…」
　そしてそう呟いたのだ。

　まるでショールームみたい…

　それは今から約六年前の、あの和哉と出会う約一年前位に、まだ離婚していない、いや、離婚などするとは夢にも思っていない結婚生活三年目、そして元旦那の地元に偶然転勤して一年位経た頃に、
『そろそろ家でも…』
　と、いう義母の勧めがあり、ショールームを回っていた事があり、その時の感銘からの想いといえたのである。

　当時、夫婦で住んでいたマンションは、築五年位なのだが、平凡で、典型的な、何処にでも在るような普通の２LDKのマンションで、内心、少しだけ不満を感じていた…
　そしてわたしは、実は、こうみえても料理が得意であり、それ故にキッチンには少しこだわりを持っていたのであった。

　その時、何軒かのショールームに訪れ、憧れを持ったキッチンが…
　正に、このゆかりさん宅のキッチンの仕様に限りなく近いのである。

　最新のアイランドキッチン…

　全ての機能を凝縮し、そして便利かつ機能的に配置されたビルトイン式の収納スペース、冷蔵庫、食洗機、そしてオーブンレンジ等…
　このゆかりさん宅のキッチンこそが、正にあの時、羨望のため息を漏らしていたショールームのキッチンなのであった。

　そして、もちろん、最新であるが故に値段も相当高く、また、その後直ぐにわたしの不妊症が発覚し、瞬く間に家を建てるどころか、あっという間に離婚騒動へと発展してしまったから、余計に夢のまた夢のキッチンでもあったのだ…
　だがそれが、今、現実に、リアルに目の前にあるのだ。
　わたしのテンションはマックスに高ぶっていたのである。

　そして本当に新品同様に、ピカピカで綺麗なのだ…
　だからゆかりさんのこのキッチンへの愛着とこだわり感も余計に感じられ、更に感銘、感動して興奮してしまっていた。