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第15章 絡まるストッキング９　　　　　美冴とゆかり

　29　嫉妬心

　嫉妬心…

　わたしがこの感情を初めて自覚し、意識したのはつい最近の事であった。

　それは当時『黒い女』こと、今夜、これから一緒に過ごそうとしている
『蒼井美冴』さんが…
　いや、美冴さんの女性としてのあまりにも美しく、魅力的であるという事に気付き、より意識した時に初めて持った感情であったのだ。

　わたしは、30歳までのこの今までの人生の中で幸いな事に、本当に順風満帆で何不自由なく恵まれて幸せに過ごせていたから、この『嫉妬心』という感情を持ったり、自覚した記憶が無かったである…

　だが、少し前、約一ヶ月前くらいであろうか…
　この美冴さんの魅力溢れる美しさに、当時は部長であったわたしの最愛の男である大原浩一が、気付いてしまったのであった。

　そしてその時から彼は、美冴さんに対して、いや、わたし以外に初めて、フェチ的な、とてもいやらしい目をして見つめる様になったのである…

　その時からであった…

　わたしが『嫉妬心』を、いや、美冴さんに対して、激しく、もどかしい想いに陥る程に『嫉妬心』という感情を持ち、初めてその想いを自覚したのであったのだ。
　
　その初めて抱いた『嫉妬心』にわたしは激しく戸惑い、そして動揺したのである…
　そして逆にいえば、その激しい『嫉妬心』が、彼、大原浩一への更なる愛情の高まりを、そして、最近変わったと皆に言われる変化を、わたしに新たに与えてくれたともいえる。

　その嫉妬心を…

　しかも、不意に想い浮かんだ常にわたしに付き纏い、わたしの軌跡を追い続けてきていたかわいい直接の後輩であり、色々な意味での関わりのある武石健太を美冴さんに取られてしまうみたいな嫉妬心ではなく…

　逆にわたしから健太が、美冴さんを取っていく、奪っていく様な感情の嫉妬心を…

　現実には美冴さんと健太はお付き合いを始めているのだから、決して奪う訳ではなく、至極、普通で当たり前の事なのだが…

　そんな感情の騒めきの嫉妬心を…
　感じてきているのである。

　しかも、この嫉妬心は…

　もしかしたら美冴さんに彼を、大原浩一を直接関わらせてしまったならば、奪られてしまうのではないか…
　という、あの時抱いた想いの
『嫉妬心』の騒めきに近い、いや、似ているのだ。

　まさか…