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シャイニーストッキング
第15章 絡まるストッキング9     美冴とゆかり
 38 この目は…

 だけど…

 今のわたしは、その大原本部長との件に関しては、やむを得なかった、と、そしてそのお陰で覚醒できたのだから…
 と、開き直っていたのではあったのだ。

「うん…
 でもね、でもねぇ…
 本当に忙しいのとね、あとね……」

 するとゆかりさんは、堰を切ったかの様に、大原本部長とのこの約一週間程度の成り行きの話しを、わたしにしてきたのである。

 お互いに仕事が急に多忙になってしまったこと…

 ようやくお盆休みになるからと思っていたら、急に山崎専務絡みからの副社長との二泊三日のゴルフのこと…

 ようやくゴルフが終わって逢えるかと思ったら、大原本部長のお母様が急に急性心筋梗塞になって緊急入院をして、慌てて帰省してしまったこと等々を…
 一気に話してきたのだ。

 その勢いは、余程、ストレスを溜めていたのであろう…
 そんな勢いであり、誰かに話したくてずっと貯め込んでいた様な感じであった。

「えっ、本部長のお母様がっ?」
 その緊急入院にはわたしも思わず驚いてしまったのだ。

「うん、そこまで重症ではないのだけれど、心筋梗塞って大病だから、しばらく安静入院らしいのよ…」

「そうなんだぁ……」

「うん、だから、本当はね、帰省前に二日間くらいは余裕で逢えたんだけどね…」
 と、本当に寂しそうに呟く。

 これが、この話し方がまた、可愛いのだ…
 思わず、わたしの心までもがキュンとしてしまったのである。

 うわぁ、こんな…

 こんなに可愛らしく変わったなら、大原本部長も、絶対にゆかりさんの事は手放せなくなったんじゃないの…
 
 それに、仕事もバリバリできるし…

 公私共々に大切なパートナーに完全になっちゃったんだ…
 わたしはこのゆかりさんを見て、余計にそう感じた。

 そうよね、わたしなんかが入り込む隙間なんか、最初から無かったのよね、それを奪うなんて…
 と、わたしは思わず自虐する。

 ハナからゆかりさんとは勝負にならなかったのだ…
 と、つくづく感じたのだ。

「だから、少しだけ寂しくなっちゃってぇ…」
 そうゆかりさんは呟きながらわたしの顔を見てきたのである。

 あっ…

 ドキ…

 この目は…
 
 そう…



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