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シャイニーストッキング
第4章 黒いストッキングの女3 ゆうじ
 31 二人の刻 ⑧

 本当は一つだけ訊いておきたいことがあり、胸の奥にしまって置いてあるのだが、彼女の存在を思い出して訊きたい欲求が湧いてきてしまっていた。
 それは、今夜、彼の話しを聞いて信じて納得はしているのだが、どうしても心の奥にしこりとして残っていることがあるのだ。

 どうしよう、訊いてもよいのかな…

 もし訊いたら彼の想いに水を差してしまうのではないか、と、訊きたくても訊けないでいるのだ。

 「ん、みっさ、どうかしたの」
 そう逡巡している私に気づき訊いてきた、そして彼はこの時から私をみっさと呼び出した。

 えっ、みっさ、か…

 みっさは小学校時代から同級生から呼ばれていたあだ名だ。

 懐かしいな…

 私は訊いてよいのか、どうなのか悩み、彼を見る。
 すると彼の目はまた碧い目をしていたのだ。

 訊こう、訊くなら今だ、今を逃すともう今更って感じになって二度と訊けないかもしれない…

 「あの……ね…訊きたいことがあって…」

 「うん…」
 彼は碧い目で訊いてくる。

 「怒らないで……ね…」

 「うん…」
  頷く。

 「あのね…どうして…私なのかな…って…」

 「どうしてって……あっ、ミッコのことかぁ…」
 彼は目尻に皺を寄せ、優しい笑顔でそう言った、そして、MIKACOさんを、ミッコ、と呼んだ。
 その、ミッコ、と呼んだことに、私はその時一瞬だけ彼の彼女に対する想いの深さを勝手に想像し、嫉妬してしまった。

 「なぜミッコじゃなくみっさを選んだか…気にしてる訳だな…」
 彼は微笑みながら話し始める。

 「それは初めて旅行代理店で見たみっさの目だよ………」

 「えっ、目…」
 私と同じだ。

 「…勿論、顔も綺麗だったしタイプだから気に入ったんだけど……」

 ………あの時のみっさの目がなんとなく深い、そう、蒼い目に見えたんだよ、苗字が蒼井だからシャレじゃないぜ、なんか目の奥底に深い悲しみを隠しているような、そう、まるで冬の明け方近くの蒼い海の色に見えたんだ、そしたらもう気になって気になって…
 そしてみっさの脚がさ、あ、知っての通り俺チョー変態の脚フェチのストッキングフェチだからさ、脚も、ストッキング脚も俺の理想的で、そう、完全な一目惚れさ…
  ……と、ここまで一気に話してくれる。

 目…
 
 蒼い目か…


 
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