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シャイニーストッキング
第15章 絡まるストッキング9     美冴とゆかり
 150 電話

 ああ…

 ゆかりさんに逢いたい…

 すぐにでも逢いたい…

 夕方からなんて…

 とても待てないわ…


 よし…

 わたしはゆかりさんに電話を掛ける。


「はい、もしもし…」
 そのゆかりさんの声を聞いた瞬間に、
 ドキドキドキ…してしまう。

「あっ、ゆかりさん、わたし、美冴です…
 今、電話大丈夫ですか?」
 

「は、はい、大丈夫です…」

 ドキドキ…
 ゆかりさんの声を聞いただけでも心がときめき、そして、昂ぶってくる。

「ああ、良かったぁ…」

 ドキドキドキドキドキドキ…

「うん…」

「ねえ、ゆかりさん…」

「はい…」

「少し早いけど…」

 ドキドキドキドキドキドキドキドキ…

 わたしは思い切って

「逢いたいのっ…
 ゆかりさんに逢いたいのっ」
 
 思わず、小さく叫んでしまう。


 ああ…

 ドキドキドキドキドキドキドキドキ…

 すると…
「あ、うん、わ、わたしも…
 わたしも美冴さんに早く、ううん、今すぐ逢いたいです」
 ゆかりさんはすかさずに、そんな嬉しい言葉を言ってくれたのだ。

 わたしはその言葉が嬉しくて、いや、嬉し過ぎて、心が一気に昂ぶり、高まり過ぎてしまう…


「じゃあ…」

 じゃあ、すぐにでも行きますね…

 わたしはそう言おうとしたら、なんと…
「あ、そう、え、映画、映画に行きませんか?」
 ゆかりさんが突然言ってきたのである、いや、言ってくれたのだ。

「えっ、映画?」
 わたしはもう一度訊き直す。

「はい…映画です…
 あ、あの…『失楽…』観ませんか?」
 
「え、あぁ、あの『失楽…』ね…」

 実は、映画なら…
 いや、ゆかりさんと一緒に出掛けられるならば…
 何処でも…
 何でも良いのだ… 

 ドキドキドキドキ…

 ワクワクワクワク…

 そしてこの映画という、ゆかりさんからの嬉しい、予想外の言葉に更にワクワク感も昂ぶってくる。

「は、はい…」

「うん、良いわねぇ、ちょうど観たかったしぃ…」
 だけどわたしは、そんな嬉しさを隠してそう言った。
 本当は、本心は、飛び跳ねる程嬉しいのだが、あまりにもはしゃいでしまったら恥ずかしいと思ったのである。

 いわゆる、スカシたのだ…
 だが、心は高鳴り、昂ぶっていた。



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