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シャイニーストッキング
第4章 黒いストッキングの女3 ゆうじ
 61 最後の時間 ⑧

 「もう一つ大事な話しがあるんだよ」
 急にゆうじの目が、あの紺碧の碧い海の色に変わったのだ。

 「えっ…」
 雰囲気が急に変わったので私はドキドキしてしまう。

 「あの、あのさぁ…」
 ソワソワしている、こんなゆうじは初めて見た、そしてそのソワソワが伝染ってくるようであった。

 「このさぁ、エージェント契約が正式に決まったらさぁ…」
 「うん…」

 なんだろう…

 「このままいけばさぁ、エージェント契約が年明けに決まりそうじゃん…」
 「うん…」
 私は頷く。

 「そうなると、なんつーか、その、ちゃんとするじゃんか」
 私は頷く。

 「ちゃんと地に足がつく…じゃんか」
 私は頷く。

 「そしたら、あの……」
 「あの……」

 「け、結婚しないかっ」

   えっ…

 私はゆうじを思わず見つめる。

 「結婚してください…」

 私はまた涙が溢れ、頬に流れ落ちていく。

 結婚て…

 ソワソワがドキドキに、そしてバクバクに変わっていった。

 「あのぉ……これ…」
 ゆうじはシルバー色の箱を取り出して開ける。

 「えっ」
 
 それは立て爪ではないがダイヤが散りばめられた指輪であった、つまりは婚約指輪であったのだ。

 「あ、うん、あ、ありがとう………する」
 最後は涙で言えなくなってしまった。

 「えっ、何…」
 
 「結婚…します」

 「マジかぁ、やったぁ」

 断る理由などある訳がなかった。
 もちろん嬉しくて夢のようである、まさかの結婚であった。

 ゆうじとはこの先もずっと居たいし、何となくだが居られると思ってはいたのだが、この結婚という2文字はなぜか浮かんではこなかったのである。
 だから凄く嬉しかったのだ。
 そしてこの指輪を用意してくれていた事が凄く嬉しかった。

 「ちゃんとしっかりするからさ、ちゃんと大切にするから…」

 だからそうだったのか、ゆうじのあのトントン拍子に進めていた様子に意外さを感じていたのはこのことだったのか…

 結婚したいから、結婚するからには今みたいなただのフリーのサーファーじゃダメなんだ、地に足を着けてしっかりと前向きに生きていかないといけないんだ
 と、ゆうじは言ったのだ。

 私は感激し、抱きついてキスをする。
 
 その記念のキスは涙で海の味がした…




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