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シャイニーストッキング
第4章 黒いストッキングの女3 ゆうじ
 69 慟哭 ①

 ただ唯一分かっていることはゆうじが間違いなく神戸のおばあちゃん家に行っているという事だけであった。
 そして私は居ても立っても要られずにノリくんとゆうじの部屋に行き、何か手掛かりになりそうな物を探し始める。

 多分、パスポートは勿論、免許証や保険証等も持ってハワイに行ったと思われるので、その類いの物は何一つなかったのである、いや、それどころか過去の事を教えてくれるような物が全くなかったのである。
 そして母方のおばあちゃん家だから苗字もわからない、もちろん私達には住所などもわかろうはずがなかったのだ。

 そして時間の経過が進むにつれて被害の甚大さが報道され、唯一の手掛かりである携帯電話は全く繫がらず、私の絶望感はどんどん増していくばかりであった。

 「ゆうじさんのことだから大丈夫っスよ」
 そんなノリくんの言葉も時間と共に気休めにしか聞こえなくなっていたのだ。

 どうしよう…

 何がなんだかわからない、果たしてゆうじが被害に合っているのかいないのかさえもわからないし、分かる手段がこの時点では全くないのである。
 全くの無力であったのだ。

 その間ノリくんはさすがに男である、彼の知りうるゆうじの関係者等の全てに連絡をしていたのだが、誰も、何処も同じように何もわからず、わかる手段もなかった。
 私達は限界であり、どうにもならずに途方に暮れたままに時間だけが過ぎていったのだ。

 翌日の1月18日を迎えても同じであった。
 ただ被害の甚大さだけがどんどんと判明していくだけであり、私達にはどうにも手段さえもみつからないのである。

 そして翌々日の1月19日を迎えても同じであったのだ、15日に交わしたメールでは今日東京に帰ってくると記されていたのだが帰っては来なかった。

 私の動揺はどんどんと大きくなり、仕事も手につかず、何もできなくなってきていた。

 「美冴さん、せめて何か食べないと…」
 ノリくんと当時の店のバイトの女の子が懸命に私を励まし、世話をし始めてくれていたのだが、当初の帰宅予定のこの19日を過ぎても何の音沙汰がないこの事実に私は絶望感に陥ってきてしまっていたのだ。

 そしてテレビではようやく甚大な被害の全貌が明らかになりつつあって、倒壊したビルや建物、高速道路等の絶望的な映像が次から次へと映し出されていた…


 


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