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シャイニーストッキング
第4章 黒いストッキングの女3 ゆうじ
 70 慟哭 ②


 そしてテレビではようやく甚大な被害の全貌が明らかになりつつあって、倒壊したビルや建物、高速道路等の絶望的な映像が次から次へと映し出されていた。
 そして何より私の心を揺さぶってきたのが、古い一般住宅の火災と倒壊の報道であったのだ

 ばあちゃん家古くてさぁ…

 私の脳裏には、そう言っていたゆうじの声が聞こえていた。

 まさか、そんな、そんなこと…

 徐々に最悪の想いが心に渦巻き始めていたのだ。

 そして1月20日になり、この音信不通は何かしらの被害にあっているのはもう間違いないものだと思われ
 「私、神戸に行くからっ」
 と、神戸行きを決断し、ノリくんに電話をする。

 「いや、俺が行きますから、今の段階だとなかなか現地に辿り着くのは大変みたいだし、ましてや今の美冴さんには無理っスよ」
 そうなのだ、今の私は眠れず、食べれずでフラフラで立っいるのが精一杯の状態であったのだ。
 
 「無理っスよ、そんな状態じゃ」
 私は自分がこれ程弱い人間だとは思ってもいなかった、それがまた私にはショックでもあった。

 「とりあえずまず眠って下さい、食べて下さいっス」
 ノリくんの優しさが心に染みてくる。

 「とりあえず明日行けるだけ行ってみますから…」
 まだ当時の現地の混乱は相当なモノであり、災害救助の自衛隊が現地に辿り着くのが精一杯の状況で、災害ボランティア等でさえもなかなか現地入りが難しい状態であったのだ。

 そして夕方に母親が来宅した。
 ノリくんが旅行代理店の社長を通して実家に連絡してくれたそうである。

 「お、お母さん…」
 私は母親の顔を見た瞬間から今まで堪えていた涙が、まるでダムの決壊の如くに溢れ出て号泣してしまった。
 張り詰めていた心が全て緩み、壊れてしまったのだ。
 私のそこからの記憶は曖昧になっていく。


 ノリくんがそれから出来る範囲で色々やってくれたのだが、時間はどんどん過ぎていき、可能性はますます絶望的となっていったのだ。
 そして私は母親に連れられて実家に戻り、心が壊れていく。

 ノリくんはそれから様々な人を雇い、現地に派遣し、避難所で聞き込み等をさせ何とか手掛かりを掴もうと必死に捜索を続けてくれていたのだが、何せゆうじ自身の情報が少な過ぎたのである。

 祖母の名前すらもわからないのだから…
 
 


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