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シャイニーストッキング
第4章 黒いストッキングの女3 ゆうじ
 71 慟哭 ③

 どうしても祖母の名前も住所もわからずに、とうとう探偵を雇い戸籍を調べることにしたのだ。
 そしてようやく神戸の祖母の住所がわかったのは震災後2週間が過ぎた頃であった。
 だが判明したその住所が最悪な場所であったのだ、なぜならその場所は地震直後に火災でほぼ全焼失し、一番被害が大きいといわれている地区であったからだ。
 しかしそのエリアの避難所等でゆうじ等の情報は一切掴めず、ただ祖母宅は全焼失していたという事実だけが分かったのである。


 そして私の心は完全に壊れてしまう。

 ノリくんからその絶望的な状況を聞いて私は狂ったかのように泣き叫んだ、そしてその後の暫くの記憶はない。
 ただ、それからずっと泣き続けて引き篭もっていたのだという。

 唯一残っている記憶は

 どうしてこんなことになるのか
 なぜゆうじが
 ゆうじのこれまでの人生はツキまくりの素晴らしい人生ではなく、この時を迎えることが分かっていたかのようなまるで

 生き急ぎ…
  ではないのか…
  
 と、私は心の中で泣き、叫び、慟哭したことだけを覚えている。

 私はそれからの約半年間引き篭もる。
 その間に何度も何度も絶望し、自ら絶とうと思ったのだが怖くてできなかったのだ。
 なぜなら、いざ自ら絶とうとするとなぜかゆうじのあの碧い目が脳裏に浮かび、できなかったのである。

 そして母親の愛情のお陰でもあった。
 やはり母親も私のそうした感情や行動を警戒してか、毎日、毎晩、常に気に掛け、しつこいくらいに干渉してくれたので思い留まることが出来たのかもしれない。

 でもしかし、なんといってもノリくんの存在に尽きたのである。
 誰も身内がいないゆうじに対してそれ以上に本当に色々してくれ、助けてくれたのだ、そしてお金も相当使ったはずである。

 「お金、そんなことはいいんス、自分はそれ以上に、その何十倍も沢山のモノを貰ってきたんスよ…」
 ノリくんの言葉が重く心に染みた。

 「だから美冴さん、時間掛かってもいいんで元気になって下さい、ゆうじさんの遺産は俺が守っていきますから」
 
 ゆうじの遺産…

 今思い返せば、正規輸入代理店の為に立ち上げた会社の社長をノリくんにしたのも、ゆうじにはこの悲劇の未来が分かっていたのかもしれない。
 
 そしてノリくんだけではなかった…





 
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