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シャイニーストッキング
第4章 黒いストッキングの女3 ゆうじ
 73 そして…

 私はこれからの生きていく道標を失い、そして希望の灯りも見失ない、これからも続く人生という大海原の海に漂流してしまったようであった。
 しかし時間の経過とは残酷であり、生きて行くことはもっと残酷であったのだ。

 死ぬことができないのなら生きていかなくてはいけないのだ、生きているならこうしていつまでも引き篭もっては居られない。
 つまり生活をしていかなくてはならないのである。

 そして時間の経過と共に色々なことがどんどん走り過ぎていくのであった。
 それにあれ程愛したゆうじとの生活や記憶、死という絶望的な想いや悲しみの現実が時間と共に少しずつだが薄れていくのである。
 時間は止まってはくれないのだ。
 それに周りは既に前に向かって歩き出している、だからあの時から立ち止まってもがき苦しんでいるままの私などに、もう誰も振り向いてはくれなくなっていた。
 周りにとって既にゆうじの死は、過去の事になりつつあったのだ。
 
 そしてなによりも一番辛いことがあった、それは生きているとお腹が空くということであった。
 何もしなくても生きている限りお腹が空くのだ、何も食べたくなくても、食に対する興味が無くても、生きているとお腹が空くのである、だから仕方なく何かを食べる、そうするとたまに美味しいと感じることがある。         
 それがまた辛いのだ。

 私はまだ、こうしてずるずると生きている…
 そうしてまた自虐に陥ってしまう。

 もうこのまま生きる屍に陥ったままでもいいと思っていたのだが、生きているとこうして食事をしなくちゃならない、生きる為に生活を維持しなくちゃならない。
 そして母親が
 そろそろ立ち直れ、甘えるな…
 と、ついに突き放してきた。
 それは母親や周りの人達からすれば至極最もな意見ではある、とうとう私にはそんな逃げられない現実が目前に迫ってきていたのだ。

 そして…

 この壊れた心はまだまだ直ぐには修復できそうになかった、だから無理に修復などせずに全ての想い、希望、欲求を心の奥深くに封印することで心の中に厚い壁を造り、何も求めず流れのままに、そして残りの心は全てゆうじの死に対しての喪に服しながら生きていくこうと決めたのである。

 万が一、時間の経過と共にこの封印が解けられる時がきたならば、その時は…

 

 

 
 
 
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