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シャイニーストッキング
第18章 もつれるストッキング2      佐々木ゆかり
 97 敦子の想い(34)

 だけど…

 だけど…

『でもねぇ、わたし達って世間一般的には認めて貰えないけれどねぇ…
 ある意味、性癖ってさぁ、ううん、性嗜好ってさぁ…
 本能だからさぁ…』

『え、ほ、本能って?』

『そうよ本能よ…
 ほら、食べる、寝る…そしてヤる…
 人間の3大欲求のいわゆる本能よ』

『あ…』

『そしてそのヤるが、わたしらみたいなのは「同性愛」な訳でしょう?
 女同士しか、もしくは男同士しか愛せない訳だから…』

『あ、は、はい…』

『だからさぁ…
 世間一般的には異常な訳だからさぁ…
 認められないし、認められる訳が無いのよねぇ…』

 確かにママの云う事は、至極もっともな、世間一般的な正論であった…

『ましてやさぁ、アナタとまーちゃんは歳の差があり過ぎるものねぇ…
 お友達としての言い訳も無理がありそうだしねぇ…
 どうにもならないわよ…』

 さすがはこの同性愛の人生経験豊富なママであった…
 全てを見透かし、理解してくれての言葉である。

 わたしは哀しみは変わらないが、心の重さが少しだけ軽減できた気がした…

『なかなか泣けもできなかったんでしょう?
 今はお客さんも居ないからさぁ、沢山泣いちゃいなよ』

 そしてわたしはそのママの言葉に、見事に心の隙間を突かれ…
 涙のダムが完全に崩壊してしまい…

『…えっ、えっ、ひ、ひん…うわぁぁ…』
 大号泣してしまう。

 そんな悲鳴にも似た嗚咽をし、激しく泣きじゃくるわたしをママは優しく抱き締めてくれ…

『涙が枯れるまで泣いちゃいなさい…
 で、その後に…』

 抱いてあげるから…

 と、ママはそう耳元で囁いてきたのである。

『ひ、ひん、えっ、あぁぁぁ……』
 このママには、そんな想いまで見透かされてしまっていたのだ。

 そう…

 わたしは、まゆみサマとのこのツライ現実、事実を忘れさせて欲しかった…
 いや、忘れるほどに激しく、強く抱かれ、この矛盾したカラダの疼きを消したかったのである。

『グチャグチャに狂いたいんでしょう?…
 だから、わたしの処に来たんでしょう?』

 あぁ…

 そう、わたしは…

 狂いたい、いや、狂わせて欲しいんだ…

 このツライ現実から逃げたいんだ…

 
 わたしは大きな声で泣きじゃくり…

 心の中で慟哭を叫んでいた。




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