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シャイニーストッキング
第5章 黒いストッキングの女4     部長大原浩一
 11 頑ななこだわり

 「おぼろげな目ねぇ…」

 その時、本当にあの黒い彼女と一度話し、そのおぼろげな目を自分自身の目で見てみたいと心から思っていたのだ。

 「ああっ、また彼女と話してみたいと思ってたでしょうっ」
 「えっ、い、いや、違うよ」
 相変わらずのゆかりの勘のよさに思わず狼狽えてしまう。

 「うそっ、部長の嘘はすぐわかるんですからねっ」
 「うっ…い、いや、すまん…」
 「ほらぁ、やっぱり、ダメですよ、絶対に部長には面接はさせませんから」
 「う、うん、ただ、ほら…」
 「ほらって何ですか」
 「いや、あまりにも、いつも、おぼろげな目って言うもんだから……つい…」
 なぜか彼女はこの事には頑なにこだわってくるのであった。

 「この前の新事業雇用をあっさりと断ったんだから、どうせ今回の正社員雇用の話しだって簡単に断ると思いますから、だから部長の出る幕はありません」
 「うむ…はい…そうだな…」
 ここは触らぬ神に祟り無しということで、すぐに引くのが一番だった。
 ただ、どうにもあの欲情のきっかけの心理と、この頑ななこだわりには今イチ理解が出来ないでいたのである。

 そしてゆかりはこんな感じで言うだけ言って寝落ちしたのだ。
 それは私が2本目の缶ビールを冷蔵庫から取ろうとベッドからちょっと離れた隙であり、それは本当にあっという間のことであった。

 そうだよな、ゆかりも相当疲れているはず…
 そのかわいい寝顔を見ながらそう思っていたのだ。

 ただ、本当にあの欲情は何を意味しているのだろうか…
 私はこの釈然としないこの事をあれこれと考えながら、ゆかりの寝顔を眺め、2本目の缶ビールを飲んでいく。

 嫉妬、欲情、こだわり…
 本人に聞くに聞けないモノばかりである。

 ま、そのうちわかるだろう…
 結局はいつものように楽観的な想いになり、煙草に火を点けた。

 「……あ…」  
 なぜかこうして煙草に火を点けると、いつもゆかりは目を覚ますのだ。

 「あの…仕事の話しを…」
 話しをしていいか…と、目で問いかける。
 
 そして少しだけ人事の話しをし、眠りに着いたのだ。

 とりあえず今夜も幸せな時間であった。 





 ブー、ブー、ブー、ブー…

 朝6時、私の携帯電話のバイブの振動音が鳴り響く。
 山崎専務からであった…


 
 

 
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